今は日経平均2万3000円超えたらいけない病 この「病気」が蔓延する根拠はどこにあるのか

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アメリカの通商政策について言えば、市場の足元の注目は、米中関係からNAFTA(北米自由貿易協定)にシフトした感がある(アメリカで識者や投資家の意見を聞くと、昨年から既に関心は米中よりNAFTAだった、と現地で感じた)。

もちろん、中国についても、一部報道で、ドナルド・トランプ大統領は9月上旬にでも、対中輸入2000億ドル分について、追加の関税引き上げを行なう意向だ、と伝えられており、ボーイングやキャタピラーなどの中国関連銘柄が、売り込まれる動きもあった。それでも、2000億ドル分の追加というのは、既知のことでありサプライズではないため、アメリカ株価全般が大きく崩れるようなことは起こっていないし、両社の株価調整も、直近の8月の安値を全く割り込んではいない。

NAFTAについては、既報のように、アメリカ―メキシコの間では修正について合意がなされた。修正前に比べれば、自動車について、自動車部品の域内調達比率の引き上げ(62.5%以上→75%以上)、賃金条項(時給16ドル以上の地域~実質アメリカ~からの調達が40~45%以上)、無税でメキシコからアメリカに輸出できる上限台数の設定(240万台以上の部分には課税)といった、メキシコにとって厳しい条件となっている。

それでも、修正交渉が決裂し、メキシコ産の全ての自動車に対して高関税がかかる、といったような混乱(メキシコ経済のみならず、メキシコで生産を行なっているアメリカ自動車メーカーにとっても)を回避した、という点では、最悪の事態よりかなり「まし」だったと評価できよう。

現在はアメリカ―カナダ間の交渉が行なわれており、当初のメドとされていた8月末までの交渉合意には至らなかった。しかし合意に向けて「両国とも前向き」と伝えられており、今週以降も交渉は継続される。この2つの交渉で「時差」は生じるが、NAFTAが消えてしまい、アメリカ企業を含む多くの企業に混乱が生じる、という事態は、避けられると見込んでいる(またトランプ大統領が、オフレコと称して余計なことを言ったという話も伝わっているが)。

相場の流れは明るい方向へ

今週の国内株式市況を展望すると、米雇用統計(7日)発表を控えているなど、投資家が様子見を正当化する材料はある。また、「何となく日経平均2万3000円超えの定着は難しそう」、との心理も、しばらく残る可能性はある。

それでも、すぐではないとしても、企業収益の実態が日経平均を押し上げ、投資家心理が大きく明るい方向へ変化することが見込まれる。こうした見解を背景に、今週の日経平均の予想レンジは、週内に投資家心理の好転が何とか始まるという前提を置いて、2万2700~2万3500円を予想する。もし2万3000円を超えての上振れが今週ないとしても、時間の問題だろう。

馬渕 治好 ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリスト

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まぶち はるよし / Haruyoshi Mabuchi

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米国マサチューセッツ工科大学経営科学大学院(MIT Sloan School of Management)修士課程修了。(旧)日興証券グループで、主に調査部門を歴任。2004年8月~2008年12月は、日興コーディアル証券国際市場分析部長を務めた。2009年1月に独立、現在ブーケ・ド・フルーレット代表。内外諸国の経済・政治・投資家動向を踏まえ、株式、債券、為替、主要な商品市場の分析を行う。データや裏付け取材に基づく分析内容を、投資初心者にもわかりやすく解説することで定評がある。各地での講演や、マスコミ出演、新聞・雑誌等への寄稿も多い。著作に『投資の鉄人』(共著、日本経済新聞出版社)や『株への投資力を鍛える』(東洋経済新報社)『ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係』(金融財政事情研究会)、『勝率9割の投資セオリーは存在するか』(東洋経済新報社)などがある。有料メールマガジン 馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」なども刊行中。

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