医者と患者が「ガッツリすれ違う」根本理由

大竹文雄×石川善樹「行動経済学の力」対談

大竹:科学的に正しい情報ではなくて、自分がよりよく知っているものを優先して意思決定したいという特徴を持つのが、利用可能性ヒューリスティックです。

行動経済学で知る「人間の意思決定のクセ」

大竹:人間の意思決定のクセで代表的なものは4つあります。

1つは「プロスペクト理論」。治療を決定するというのは、「何%でうまくいく、何%でうまくいかない」という不確実性の下での意思決定だといえます。

伝統的な経済学では、客観的な確率を基に人は合理的に意思決定すると考えられていました。しかし、行動経済学では、確率そのものの人の認識が、客観的なものと異なることと、現状からの変化を重視してしまうということで、意思決定は伝統的な経済学の予想と少しずつずれているとされています。プロスペクト理論は、そうした不確実性下において意思決定をするときの人間の特性を示しています。

たとえば、人は得をするときには安全志向になるけれど、損をするときはリスクを好んでしまう。「現状維持バイアス」のように、現状が維持できる可能性があるのなら、それに賭けてしまいたいと思うのです。

石川:一気に損を取り戻せるかもしれないというときには、リスキーになってしまうということですね。

大竹:2つ目は、すでに紹介した「現在バイアス」。遠い将来のことについては、忍耐強い意志決定ができますが、直近のことになるとせっかちになる。嫌なことを先延ばしする、またはつねに自分の好きなものを手にしたいという特性があります。

医療の場合、特に大事なのが3つ目の「社会的選好」。人間には、利他的な行動、つまり人のことを考えるという特性と人の行動に影響されるという特性があります。

石川:「周りの人がこうしていますよ」と言われたら、「そんなものかな」と思うということですね。

次ページ合理的に考えるより、直観的に考える
ライフの人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • 仲人はミタ-婚活現場からのリアルボイス-
  • ぐんぐん伸びる子は何が違うのか?
  • 本当は怖い住宅購入
  • 非学歴エリートの熱血キャリア相談
トレンドライブラリーAD
人気の動画
採用担当者が嘆く「印象の悪い就活生」の共通点
採用担当者が嘆く「印象の悪い就活生」の共通点
ヤマト独走に待った!佐川・日本郵便連合の勝算
ヤマト独走に待った!佐川・日本郵便連合の勝算
不祥事続く三菱電機、「言ったもん負け」の特異体質
不祥事続く三菱電機、「言ったもん負け」の特異体質
度数1%未満の「微アルコール」が広がる理由
度数1%未満の「微アルコール」が広がる理由
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
私大トップ校の次の戦略<br>早慶上理・MARCH・関関同立

受験生確保や偏差値で高い水準を誇る関東・関西のトップ私大13校。少子化や世界との競争といった課題に立ち向かうための「次の一手」とは。大きく揺れる受験動向や、偏差値や志願倍率と比べて就職のパフォーマンスが高い大学・学部なども検証します。

東洋経済education×ICT