「新幹線テロ対策」安全と利便性のジレンマ

車内防犯と駅の手荷物検査、どちらを選ぶ?

「それに代わる対策として、できることをやる」(田中本部長)として導入した対策が、乗務員や車内巡回の回数や、警備員の乗車頻度を増やすことだった。警察とも相談し、鉄道警察隊の乗車頻度を高めてもらうことを検討する。

JR東海は東海道新幹線の車掌数をこの春に3人から2人に減らしたばかり。車掌など乗務員の数を増やすことは考えていない。そのため、出張中で新幹線を利用する社員にも車内巡回に加わってもらうことも検討しているという。

刺又を奪われると相手の武器になる(撮影:尾形文繁)

さらに防護盾、対刃手袋、対刃ベスト、刺又といった防護装備を8月から列車内に設置。8月22日に静岡県警と共同で行った訓練は、防護装備を用いて暴れる不審者への対応を学ぶものだ。「防護盾は片手で持つというイメージがありますが、両手でしっかり支えてください」。実地訓練の開始に先立ち、防護盾の使い方を鉄道警察隊の担当者が説明する。

防護装備は相手の武器になりかねない

長い柄の先についているU字型の金具で相手の動きを封じる刺又(さすまた)は、女性でも扱える手軽な防犯器具として学校や病院などにも導入が進むが、使いこなすのは難しそうだ。「刺又は長く持って、相手にたすぎがけになるように当ててください。相手の胴に当てても、相手の両手がフリーの状態では、簡単に奪われてしまいます」(鉄道警察隊の担当者)。暴れる犯人にたすぎがけになるように当てるのは素人には至難の業だ。そのため、刺又を扱うのは乗務員ではなく、警備員が想定されている。

防護盾は両手で支える必要がある(撮影:尾形文繁)

防犯スプレーの使用法についても警察隊から注意があった。「不審者と1対1のときにだけ使用し、乗客がいる場所では使わないでください。スプレーが目に入ると、まったく見えなくなり、乗客が逃げられなくなるおそれがあります」。スプレーの効果は数時間続くという。これも使い方を間違えると逆効果だ。「スプレーを使う人はその手で絶対に目を触らないように」という注意もあった。過去にそのような失敗事例があったのかもしれない。

鉄道警察隊員による防護装備の説明に続き、いよいよ列車内での実地訓練である。訓練は14号車の約半分が使われ、そのスペースは乗客役のJR東海社員でほぼ満席。不審者に扮する警察官は迷彩服を身にまとい、3列シートの窓際に座っている。

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