総務部長が全社員にカミングアウトした理由 女性として生きていく選択をした
──そして2012年、ついに会社でカミングアウトを決行した。
自分の思いをきちんと文章で伝えたくて、金曜の終業後、社内一斉メールでカミングアウトしました。ちょうどその頃、ビジネス誌がこぞってLGBT特集を組み、親会社の電通社内でトランスジェンダーを含めた性的少数者への理解を深める取り組みを行っていることを知りました。それがとても勇気をくれ背中を押してくれた。カミングアウトしてもクビにはならない。家族を路頭に迷わせることはないと確証を得たんです。
告白に対し、好意的な励ましメールがいくつも返ってきて、読みながら涙で画面が見えなくなった。週明けドキドキしながら出社したら、みんな普段どおりに接してくれた。応援や激励までされたり、役員会議では社長が、「今までどおり温かく迎えてあげてほしい」とおっしゃったと後から聞きました。
一斉メールという「直球」を放ったワケ
──すでに社内では「総務部長、最近女っぽくない?」とうわさされていたそうですが、あえてその流れに任せず、一斉メールという直球を放ったのはなぜですか。
総務部長というのは社員の働きやすさ、困り事を受け止める女房役、下宿のおかみさんみたいな役割なんです。そうした信頼関係に疑心暗鬼というか「この人、大丈夫か」と思われたら、総務部長をやっていくうえで障害になる。だったら本当の自分をカミングアウトしたうえで、「これからもよろしく」って言ったほうが、絶対にうまくいくと思ったんです。
あの頃はまだ、性同一性障害という診断名を言い訳というか、手っ取り早い言葉として利用していました。今はそれをとても後悔しています。単に女性として生きたいという生き方の選択なんです。「心身ともに健康なトランスジェンダー女性です」と胸を張って自己紹介していきたい。トランスジェンダーであることが苦ではないし、病気でもない。こうした選択を自然にでき、また受容される社会であってほしいと願っています。
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