総務部長が全社員にカミングアウトした理由 女性として生きていく選択をした

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──先日、杉田水脈衆議院議員の「(LGBTは)生産性がない」発言が物議を醸しました。

まず国民一人ひとりを生産性で語ることの無意味さ。さらにトランスジェンダーは性同一性障害なのでかわいそうだから支援しよう、というのが大きな間違い。トランスジェンダーは出生時の性別と違う性で生きていこうとしている人たち。性同一性障害は医師の診断で下された疾患名。生き方の選択と病気を混同している。2007年に国連で承認された「ジョグジャカルタ原則」という性的少数者の人権に関する国際法規的なものがあります。その中に、性的指向や性自認は病気でも何でもなく、差別されることなくすべての権利を享受できるとしっかり書かれています。

性同一性障害という言葉もいずれ消える言葉です。これまでは国際疾病分類で精神および行動の障害に分類されてきましたが、改訂版では精神疾患としての分類から除外される。性別不合という言葉は残るけど、病気扱いはやめるというのが世界的潮流なんです。

家族を支えると同時に、女として生きていきたい

──たしか、息子さんにはまだ正面切って話していませんでしたよね?

本を書いた動機の1つが、これまでの真実を記録に残して、いつか時が来たとき、息子が読んでくれればいいと思ったことでした。

パートナーはもう、父親と家計を担う役割さえ果たしてくれればいいと割り切っているのでしょう。カミングアウトを機に暴走するわけでなく、家庭は乱してこなかった。家族を安定的に支えることと女として生きていくこと、この2つを両立させたいと強く思ってきたから。最近は彼女の表情も少し和らいで、笑い合うことも増えました。ただただ身勝手な夫を黙認してくれていることに感謝です。

──トランスジェンダーであることを公言できず、苦しんでいる人はまだまだ多いのでしょうね。

それぞれ会社の都合、家庭の事情はある。でも自分が妥協できる範囲、譲れない部分をよくよく考えたら、何か糸口が見つかるんじゃないか。できることから始めれば妥協策、解決策は必ずあると思います。ただ1つ、死ぬときに後悔しない生き方ができればいい。偉そうなことを言える立場ではないけれど、必ずしもオール・オア・ナッシング、何かを立てたら何かが崩れるっていう、そんな形だけじゃないと思うんです。

中村 陽子 東洋経済 記者

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なかむら ようこ / Yoko Nakamura

『週刊東洋経済』編集部記者

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