アメリカ「北朝鮮戦略」のヤバすぎる混乱状態 ポンペオ国務長官の訪朝は直前で取り消し

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トランプ大統領との関係に自信を持っているポンペオ長官は、出発する準備を整えていたが、同時に非生産的で不愉快な6月の経験の再現となることを懸念していた。それゆえに、ポンペオ長官自身が取り消しを求めた可能性もある。

「トランプ大統領は金正恩委員長との再会を強く望んでいる」とトランプ政権から助言を求められている元当局者は話す。「大統領はこの問題を解決できるのは自分だけであり、金委員長との個人的関係に全面的に基づくしかないと考えている。ポンペオ長官は首脳会談を望んでいないと思う。長官にはそこに関与する余地がないからだ」

「トランプ」から世界を守ろうとしている

実際、トランプ大統領は、ポンペオ長官の訪朝を取り消すツイートで、自身は金委員長と再び首脳会談を行うことを依然望んでいることを明らかにしている。

より政権中枢に近い人々は、彼らが直面している難題について共通の理解がある。「アメリカ当局の人々は、トランプ大統領から世界を守るために団結している」と、政権の元関係者は語る。「彼らはトランプ大統領に対するこの上ない不満と警戒感を隠していない」。

では、この先はどうなるのか。アメリカ国内の政治危機によって悪化しているトランプ大統領の気まぐれによって、先行きを予測するのはこれまで以上に難しくなっている。今後予定されている文大統領と習主席の訪朝に続いて、2度目の米朝首脳会談が開かれることになるかもしれない。

あるいは、米韓の同盟における劇的な亀裂を目にすることになるかもしれない。日本政府高官らがほとんど日課のようにアメリカ政府に対して警告しているように。あるいはまた、米朝戦争開戦の瀬戸際まで立ち戻ることになるかもしれない。いずれにしても、危機に備える必要がある。

ダニエル・スナイダー スタンフォード大学講師

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Daniel Sneider

スタンフォード大学ショレンスタインアジア太平洋研究センター(APARC)研究副主幹を務めている。クリスチャン・サイエンス・ モニター紙の東京支局長・モスクワ支局長、サンノゼ・マーキュリー・ニュース紙の編集者・コラムニストなど、ジャーナリストとして長年の経験を積み、現職に至る。

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