アメリカ「北朝鮮戦略」のヤバすぎる混乱状態 ポンペオ国務長官の訪朝は直前で取り消し

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それでも今のところ、中国は北朝鮮政府への圧力を強める準備こそ整えていないものの、「大規模な経済制裁の維持」というアメリカ政府の政策は支持しているだろう、としている。

そして、もう1つの重要な見解は、北朝鮮政策にかかわっているほとんどの専門家が、トランプ大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との再会談の延期を有言無言の目標としていることだ。トランプ大統領が大幅に譲歩したシンガポールでのショーのような会談が繰り返されれば、北朝鮮と慎重に交渉しようとする専門家らの取り組みが妨害されると考えているからだ。

今のところ、北朝鮮政策における混乱のほとんどはアメリカ大統領執務室で起きている。こうした中、混乱のもとを封じ込めようとする動きが、4つの局面で進んでいる。

1つは、北朝鮮に対する封じ込め戦略である。アメリカ国家安全保障局では誰も、北朝鮮によるミサイルと核弾頭実験の一時中断が、核能力の放棄に向けた動きを意味しているとの幻想を抱いていない。ある高官は「北朝鮮はウソつきだ」と語り、会談に参加した別の高官も「非核化に関して楽観視はしていない」と話す。

北朝鮮との交渉が果たす役割とは何か

ポンペオ長官による7月の訪朝を含め、非核化の具体化を目指したあらゆる試みは進展を見せていない。北朝鮮当局者は、北朝鮮核施設に関する宣言といった具体的な措置についての議論を拒否している。

その一方で、北朝鮮側はシンガポールでの宣言に言及し、「戦争状態の終結」への第一段階として、アメリカ軍の韓国駐留の根拠の1つとなっている既存の休戦協定の破棄から始めるという合意をトランプ大統領と結んだ、と主張し続けている。

事実、ポンペオ長官が非核化措置を強く求めた際には、北朝鮮の金英哲朝鮮労働党中央委員会副委員長は携帯電話を手にとって「トランプ大統領に電話してみてはどうか」と長官を嘲笑ったという。

ただし、アメリカ国家安全保障局関係者らは、たとえ成果が限定的だとしても、北朝鮮との交渉は、米朝戦争の脅威が再び訪れることを防ぐ役割があると主張している。彼らは同時に、経済制裁の圧力を適切に維持し、中国、韓国、ロシアが足並みを乱すのを阻止しようと懸命な努力を続けている。

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