医師は誰に対しても公平・公正であるべきか 東京医大ショックが問う、医学部入試の本質

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問いは、本問に登場する血清を注射した医師が自分であったとして、その日の日記を400字から500字でまとめるというもの。医師の月給は3000円という設定で、若干の創作は加えてもよいとの補足がある。

この条件から考えると、給料のおよそ3分の1を血清の代金として代わりに費やしたことになるが、この医師の行為はどう評価されるべきか。出題形式が少々風変わりなのは、医師の行為の是非について論評せよという通常の形式ではなく、医師の身に自分を置き換えて、その日感じたことを日記として書くことが求められている点だ。

なかなかよく練られた難解な出題であるが、私は指導している70人近い受験生に課題として与えてみた。すると多くの者はギブアップしたものの、20通あまりの答案がでてきたので、まずはその答案のうち、目に留まったものを3通紹介しよう。

受験生3人は答案をこう書いた

(答案1)

今日は今まででいちばんよい買い物をした。そして、何ともすがすがしく、感慨深い1日となった。これもすべて、ジフテリアに感染した幼い子どもと、その母親のおかげだ。

母親と少年が診察室に入って来た瞬間、私はこの母親が抱えている苦悩を悟った。だからこそ先に、処置料について話すことなどできなかった。終戦後間もない混乱の状況下で、この母親は貧しさ苦しさと戦い、希望を失いそうになりながらも、子どもを守り生き抜こうとしていた。その真摯な姿に胸を打たれない者がどこにいようか。私は立場上、医師として特定の患者に施しをしたり、目をかける訳にはいかないが、この母親が夫から継承したロンジンの時計を1000円で買い取れ、得した気分だ。

今日は非常に晴れやかな1日となった。この家族に出会えたことに感謝したい。そして、このような母親のもとに生まれ、育っていく正広君の未来が平和であることを祈りたい。

(答案2)

いつもと変わらぬ朝、いつもと変わらぬ新緑が庭にあふれていた。今日もこのまま1日が終わるのかと思っていたら、ふと辺りの木々がざわついた気がした。ドアのほうに目をやると1人の女性が子どもを連れて立っていた。木々の予感は的中したのだ。

その子どもはジフテリアだった。私は急いで血清を打とうと準備していたが、その際、女性は私に、医療費の心配を打ち明けてきた。その相談がくることは、彼女が診察室に姿を現したときに、すでに察していた。しかし私にはそんなことはどうでもよかった。私の目には苦しむ男の子の姿しか映っていなかったからである。私の月給からしても、血清の代金はなかなか高額であった。しかし、目の前で必死に生きている女性のことを思うと、まともにお金をもらう気になどなれなかった。今日手に入れたロンジンの時計は、明日あの子に返そうと思う。時計に詰まった思い出に引き換えるにも、あの子の命と引き換えるにも、1000円では安すぎる。

(答案3)

今日、私の元に、1人の少年を連れた女性が来院した。彼女の顔は絶望感に満ちていた。少年はひどくつらそうであり、診察の結果は重度のジフテリアであった。処置前に彼女が血清の値段を尋ねてきたとき、私は彼女には持ち合わせの金がないことがすぐに分かった。彼女は今、夫と離れ、1人で子どもたちを育てていることも、察しがついた。

目の前で彼女が泣き崩れる姿に接し、私は困窮する人々を救うことこそが、医師の使命と考え、2人を絶対に守ろうと思った。正直なところ、私もお金に余裕があるわけではない。けれども、目の前の患者が苦しみから解放されることこそが喜びであり、私の生きがいなのだ。この親子は今、苦境に立たされているが、つらい時期を乗り越え、必ず明るい未来が彼らに訪れると思う。この時計はいつまでも今日の気持ちを忘れぬために大切に持っていようと思う。あの少年が成長して、私の元を訪れるようなことがあれば、この時計を返せればよい。

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