「信教の自由」を盾に開き直る宗教界への疑問 収支はひた隠し、労務管理もずさんそのもの
審査会が対象文書の提示を要求(インカメラ審理)しても免れようとする文化庁の対応に、「法の理解に重大な問題がある」「今後は法の趣旨に則って適切な対応をすることが強く望まれる」などと異例の「付言」がなされたこともあった。ところが「付言」がなされたケースで文化庁は、新たな不開示の理由を示すことなく、再度不開示と、答申と異なる決定をしている。文化庁宗務課長は宗教法人審議会で「信教の自由を妨げることのないように慎重に取り扱う必要がある」ためと説明している。
答申に法的拘束力はないが、「答申と異なる決定を諮問庁がすることは極めて例外的」(総務省)だ。実際、2015年度に審査会に諮問し決定等を行った922件のうち、審査会の答申と異なる決定をしたのはたった1件だった。
行政介入を避けるべきというなら情報公開を徹底すべし
制度に詳しい特定NPO法人「情報公開クリアリングハウス」の三木由希子理事長は、「存否応答拒否が許されるのは、警察の捜査情報や自衛隊の防衛機密などに限られる。宗教法人の財務諸表が同等とは思えない」と話す。信教の自由の尊重から行政の宗教介入は避けるべきというなら、「より情報公開を徹底し社会的監視に委ねる道を探るべきだ」と指摘する。
情報が閉ざされた結果、次のようなことも起こっている。関係者によれば、都内のある寺院は10年間まったく同じ数字の財務諸表を提出しているが、何の指摘も受けていないという。行政は宗教介入に当たるからと基本的なチェックも行わないのである。宗教法人の決算業務にかかわった別の税理士法人関係者は、「非課税の宗教行為と課税対象の収益事業の財布も分けておらず、まさにどんぶり勘定。これで通用するとは信じられなかった」と振り返る。
僧侶で税理士の上田二郎氏は、「この実態が明らかになれば財務諸表の公表を求める声はより強まるだろう。優遇税制も疑問視されかねない。宗教法人の大学などで経営・税務を教育するなど早急な対応が必要だ」と語る。
一般社会の常識が通用してこなかったのは、「働き方」「働かせ方」においても同じだ。
「給与明細を見て、あれだけ働いたのに残業代がないのはなぜだろうと思ったのがきっかけだった」。真宗大谷派(本山・東本願寺、京都市)で僧侶として働いていた水田悟志さん(39歳、仮名)は振り返る。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら