「木造」にプレハブメーカーが参入する事情 プレハブ工法のコスト低下にも限界がある

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人口減少に加えて世帯人数が少なくなっていることも、ファミリー向け住宅を得意としてきた大手プレハブメーカーには逆風となりつつある。以前は家族構成に合わせて自由に間取りを変更できない「企画型住宅」は売れないと言われてきたが、ここに来て若年層を中心に、少人数世帯に適したシンプルな間取りの企画型住宅の人気が高まっている。

ライフスタイルに合わせたデザイン重視の企画型住宅「LIFE LABEL」を2010年から展開するベツダイ(大分市)では、全国170社の加盟工務店を通じて、年間1500~2000棟を販売する。「ネットショッピングで好きな洋服を選ぶ感覚で、好みの住宅を選ぶ20・30代が増えている」と顧客層を絞ったマーケティング戦略で成功した。

プレハブ住宅に比べて資産価値が低下しやすいと言われてきた木造住宅でも、資産価値向上のための取り組みが始まった。高砂建設(埼玉県蕨市)など地域の有力工務店約50社が設立した「長寿命住宅普及協会」が今月から「住宅価値保証制度」を開始した。

国は2009年から長期に渡って良好な状態で住むことができる住宅の普及を目指して「長期優良住宅制度」をスタート。現在、戸建住宅の約4分の1の年10万戸強が認定を受けている。住宅価値保証制度は、この長期優良住宅を対象に、適切な維持管理・修繕を行うことを条件に、将来の住宅の予想価値を算定する「住宅価値算定プログラム」を開発。売却時に予想価値を売却価格が下回った場合には、その差額を大手損保会社と共同開発した保険商品でカバーする。

木造在来工法の工業化を飛躍的に促進

パワービルダーや地域の有力工務店などが攻勢を強めるなかで、大手プレハブメーカーが重い腰を上げた。今年4月、大手住宅メーカーが出資して木造在来工法向けの部材製造会社が誕生。三菱商事建材出身の塩地博文氏が、ミサワホームの部材製造子会社テクノエフアンドシーと協力して設立した「ウッドステーション」(千葉市美浜区)だ。出資構成は、三菱商事建材とテクノエフアンドシーが各33.3%で、残りをパナソニックアーキスケルトンデザインとYKKAPが折半した。

パナソニックは、パナホームを完全子会社化して今年4月に「パナソニックホームズ」に、木造住宅のフランチャイズチェーンを展開してきた子会社のパナソニックESテクノストラクチャーを「パナソニックアーキスケルトンデザイン」に社名変更し、住宅事業の強化に乗り出した。7月にはパナソニックホームズでも、さいたま市桜区で戸建分譲住宅の販売を開始し、木造住宅に参入。発表文には「パナソニックによる木造住宅の新工法『PSJ工法』を採用」としか書かれていないが、部材を供給するのがウッドステーションである。

木造在来工法では、設計図面データに基づいて木材を工作機械で柱や梁に自動加工するプレカット技術はすでに確立されている。しかし、現場での組み立て作業は、昔ながらに職人が柱や梁を1本ずつ組み立てる方法で行われてきた。

ウッドステーションでは、木造在来工法の図面データから大型パネルの組立図を自動作成するソフトを開発。工場で柱や梁などの部材にサッシや断熱材を組み込んだ大型パネルを製造することで、現場での組み立て作業を大幅に効率化した。木造在来工法の工業化を飛躍的に促進し、職人不足問題にも貢献すると期待されている。

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