「小学校のとき『あんた、塾行く?』と聞かれたのも、母としてはフラットに聞いたつもりだったかもしれないけれど、子どもとしては『やっぱり、行ったほうがいいんだろうな』と考えるわけですよね。子どもは親の意向を激しく忖度するものだから。
いま思うと、僕が不登校になったのも、ずっと自分の意思を尊重されてこなかったからなんですね。周りの子たちも、それで傷ついていた。だから『自分の意思が尊重される』ことが大事なんだなと。このことに気づいたのは、もうちょっと後になってからですが」
シューレに入ってからの生活も、基本的にはすべて、本人の意思に基づくものでした。プログラムの内容も、プログラムに参加するかどうかも、ルールも、何でもみんなで話し合って決めていくのです。
「そうやって自分の意思を尊重されるなかで、だんだんといろんなことに興味が広がっていって。そのなかで、やっぱりいちばん『やりたい』と思ったのが、これ(『不登校新聞』)だったんです。
自分が苦しかったときに、『学校に行かない』という選択肢を知っていたらよかった。だからみんなに、もっと情報を届けていきたい。それで19歳になって『不登校新聞』に入社したいとお願いしたんです」
「学校か、死か、だけではない」
『不登校新聞』で働き始めて、17年。石井さんがいま、特にみんなに伝えたいと思うのは、「学校か、死か、だけではない」ということだ。
「学校以外の道もあるんだ、ということです。『不登校新聞』はもともと、1997年の8月31日に起きた中学生の自殺事件を機に生まれたんですが、2学期が始まる前後の自殺ってずっと多いんですね。それはやっぱり『学校に行くくらいなら死んでしまいたい』と思う人が多かったから。
でも最近は、国も変わり始めました。特に今年の7月には、文部科学省が『学校復帰を前提とした不登校対策を全面的に見直す』と言い始めています。これはすごく大きな方針転換なので、ぜひ知ってほしい。(参考記事:文科省が踏み切った「不登校対応」の大転換)
学校現場への浸透はこれからですけれど、親も学校も、不登校になった子には、『学校しかないわけじゃない』と必ず伝えてほしいです」
今年多くの学校では、月曜となる9月3日から新学期が始まりますどうか学校以外にもいろんな選択肢があるんだ、ということを、大人も子どもも知ってもらえたら、と願います。
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