日本の「水力発電」を増強する4つの改革案 「再エネのエース」をどう活躍させるか
水力発電増強を阻んでいるものとして、次に「規制の壁」があります。
最新の気象予報システムを使って、今あるダムの水を雨の降らないときにもっとためておくことにより、発電量を増やすことができます。福島水力発電促進会議では、県内に多数ある大規模な多目的ダムで効率運用の可能性を探ってきましたが、実現しませんでした。
日本のダムには、農業用水の確保、洪水予防、水道水確保、そして発電という具合に目的が決められていて、それ以外には使ってはいけないという約束があります。
この約束を法律にしたものが特定多目的ダム法で、水力発電増強が進展しない1つの壁になっているのです。
また、規制の多さも壁になっています。
福島県の大玉村(おおたまむら)を流れている杉田川(すぎたがわ)の砂防ダムを使って水力発電ができないかという計画が持ち上がりましたが、具体的に事業を進めようとすると、「そのままでは許可できない」と主管官庁のストップがかかるという事態が何度も起こりました。
水力発電事業では極めて多くの規制をクリアする必要があるうえ、それらの規制を主管している官庁がばらばらであるために、事務手続きを終わらせるために非常に長い時間を必要とするのが現実なのです。
そして、大玉村の計画をさらに困難にしたのが系統連系の問題でした。
系統連系とは送電線の整備のことです。発電所を建設する場合、送電に関して負う責任にはルールが決められていて、発電者側の分担と大手電力会社など電気事業者側の分担とがあります。
ところが、現在のルールでは、送電網の空白となっている山間地における発電者側の分担領域が広くなり、費用の負担が非常に重いのです。大玉村の計画では、系統連系のために億単位の金額を要するため、事業化そのものを脅かしたのです。
計画した事業で浮かび上がってきた問題点をまとめると、次の3つに集約されるでしょう。
② 事業の公共性が認められていない
③ 水力発電の潜在力が理解されていない
水力発電増強のための4つの提言
これらの問題点を解決するためには、以下の4つの方策が考えられます。
河川法というのは、日本の川に関する憲法のようなものです。その条文の中に書かれている河川管理の目的は、治水、利水、環境保全の3つですが、ここに新しく「水力エネルギーの最大活用」を加えるべきだというのが、私の考える河川法の改正案です。
もし、この改正が実現すれば、水力発電を増強することは、国交省をはじめとするすべての中央官庁の仕事の1つということになり、日本の水力発電を3倍に伸ばすことも不可能ではありません。
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