日本の「水力発電」を増強する4つの改革案 「再エネのエース」をどう活躍させるか

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② 水源地域還元方式の採用

これは、水源地の地元自治体と民間業者との合同会社がダムの管理者と協定を結んで水力発電事業を行い、発生した電力をFIT(固定価格買い取り制度)により売電して利益を上げ、その利益の一部を水源地の自治体に還元しようというやり方のことです。

ダムなどが設置されている水源地域の自治体に対して事業利益の一部を納付金として支払い、水源地の森林、環境、観光施設などの整備や雇用創設事業などに活用してもらおうというもので、これにより中小水力発電の開発が大きく伸びると期待できます。同時に、山間地の過疎対策にもなると思われます。

③ エネルギーミックスの水力発電の比率を2倍に

エネルギーミックスとは、発電方法別の割合のことを指します。現在、経済産業省の資源エネルギー庁を中心に、将来の日本の電力のあり方をどうするのかという計画が作られていて、水力発電の割合は「8.8~9.2%」とされていますが、これを約2倍の15%にするべきというのが、私たちの提案です。

日本の再生可能エネルギーが伸び悩んでいるのは、水力発電の可能性を考えていないことも原因です。水力発電の潜在的な可能性を知れば、日本の再生可能エネルギーのみならず、エネルギー政策全体が変わるはずです。

④ 水力発電の増強事業に関する行政窓口を一本化する

たとえば、農業関連の行政手続きに関しては、現在、各都道府県には農業委員会という窓口があって一本化されています。この農業委員会と同じような仕組みを水力発電に関してもつくれないかということです。行政の窓口が一本化されれば、水力発電の開発は一気に進むでしょう。

国民の声で水力増強の実現を

以上の4つの方策があれば、水力発電増強は現実のものとなります。日本のエネルギー危機を回避するためにも、なんとかして、この4つを実現したいものです。

すでに国政レベルでも、福島水力発電促進会議の働きかけにより、与党の国会議員約120人でつくる「水力発電促進議員連盟」が発足し、先月19日に参議院議員会館で初会合を開きました。「自然エネルギー水力発電は日本を救う」をテーマにしたシンポジウムも行われ、活発な議論が繰り広げられました。

皆さまにおかれましても、水力増強の意義を知っていただき、なるべく多くの人に以上の事実を発信してほしいと願っております。市民の声の輪が広がれば、それが水力発電増強を目指す政官民の活動を力強く後押しすることになるのです。

竹村 公太郎 元国土交通省河川局長、日本水フォーラム代表理事

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たけむら こうたろう / Koutaro Takemura

1970年東北大学大学院土木工学修士課程修了、同年、建設省(現・国土交通省)入省。中部地方建設局河川部長、近畿地方建設局長を歴任し2002年国土交通省河川局長を最後に退官。2004年リバーフロント整備センター理事長。2014年同研究参与。2006年日本水フォーラム代表理事・事務局長。著書に『日本文明の謎を解く』(清流出版、2003年)、『土地の文明』(PHP研究所、2005年)、『幸運な文明』(PHP研究所、2007年)、『本質を見抜く力(養老孟司氏対談)』(PHP新書、2008年)、『日本史の謎は「地形」で解ける』(PHP文庫、2013年)など。

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