トヨタの変調が直撃!!一気に凍る名古屋経済 景況感悪化ペースは全国で最悪

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よくなるのが最初なら悪くなるのも最初

三菱UFJリサーチ&コンサルティングのエコノミスト・内田俊宏氏は「東海地域の景気悪化は今後、もっと深くなる」と予測する。

サービスなど製造業以外にもさまざまな産業が集積する首都圏や関西と違って、東海の産業構造は製造業の一本足打法である。トヨタを代表格とする大企業の下に4次、5次まで下請け企業が連なる製造業の集積は、事業拡大局面において、強烈なエネルギーと高い効率性となって、威力を発揮する。
 
 だが、歯車が逆回転を始めるときはそれがあだとなる。製造業を補う脇役が見当たらないためだ。「竜の尻尾が東京なら、頭は東海。最初に上がるが、下がるのも最初」(内田氏)なのだという。
 
 「トヨタ関連は来年秋まで厳しい状況が続く。残業時間を減らして対応するという」「自動車、工作機械の1次下請けなどから、バブル崩壊のときよりも先行きが不透明との声」「この1~2カ月で中規模な設備投資案件が数件白紙になった」
 
 東海地域の地銀・大垣共立銀行には、各支店からの悲痛な叫びが寄せられるようになってきた。「アンケートなどをざっと見ると、自動車関連の話が多い。この地域では末端まで自動車産業が広がっている。自動車が落ちると経営者の心理も一気に冷え込む」(共立総合研究所主席研究員・江口忍氏)。
 
 名古屋で賃金・人事コンサルタントを行う北見式賃金研究所にも、中小企業からの切実な相談が相次ぐ。内容は「自動車部品の仕事が減っており、赤字になる前に経費を何とか減らしたい」など。北見昌朗所長は「経営者には1万円単位でも経費を削りたいというニーズが強い。これから、そういう人たちを対象にした人件費見直しセミナーを開催していく」と話す。
 
 大企業から中小企業の隅々にまで蔓延する今回の景気悪化。これに追い打ちをかけているのが、ドルやユーロに対する急激な円高だ。日本ガイシ、ブラザー工業、イビデン……。東海地域では、トヨタグループに続く有力企業も海外輸出で事業を拡大してきた。
 
 そうした企業が製品需要の縮小と円高という突風にさらされ、業績急悪化の危機に陥っている。イビデンは北米自動車向け製品が不振。「需要は年内は回復しないと見ていたが、それどころではなくなった」と今期業績予想を減額修正したが、その後の急激な円高はさらに利益を奪い取ることになるかもしれない。
 
 そもそも明治以降、繊維産業の一大生産地として発展してきたのが、名古屋を中心とした東海地域である。繊維大国の時代から現在までほぼ一貫して「円高は悪、という考え方が名古屋周辺には完全に染みついている」(江口氏)。
 
 名古屋にとって、円高は輸出採算悪化という直接的な被害を引き起こすだけでなく、景況感を一気に凍らせる悪材料なのである。

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