トヨタの変調が直撃!!一気に凍る名古屋経済 景況感悪化ペースは全国で最悪

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東京や大阪より早く財布のひもを締めた?

名古屋の消費も好調な製造業に支えられてきた。00年開業のJR東海高島屋。名古屋駅に直結したこの百貨店は、駅周辺の消費を一挙に拡大させる立役者となった。

岐阜や三重など工作機械や家電工場の集積地からやってくる買い物客にとって、名古屋駅周辺のアクセスは格段にいい。これら地域の製造業の業績拡大で潤った人たちが名古屋駅周辺の消費を牽引した。「名駅(めいえき)の百貨店好調は製造業効果」(内田氏)だったのである。
 
 名古屋一の繁華街・栄地域の各百貨店に比べ、JR東海高島屋の売上高はまだ底堅いが、「今後はかなり影響が出てくるのではないか」(業界関係者)とみられている。
 
 もちろん、全国的に拡大する不動産不況とも無縁ではない。
 
 大垣共立銀行には、「栄地域ビルのテナント空室が目立つ」「三重ではショッピングモールの空き店舗が埋まらない」「分譲マンション、分譲地の売れ残りが目立つ」などの報告が上がるようになってきた。
 
 名古屋の地元では「人気のあったビルでもレンタル会議室などにして、空室をごまかしている。名古屋駅周辺でも今後、空室が埋まらない状況が顕在化するのではないか」と警戒感が強まっている。
 
 総崩れのようにみえる名古屋経済。では、「最強」の看板は完全に降ろされたのだろうか。しぶとさを裏付ける材料もいくつかある。
 
 名古屋企業の代名詞は「堅実」である。日銀をはじめとした各機関の景況感調査で全国レベルより悪化しているのは堅実さの裏返し、とも考えられる。「名古屋の経営者は他の地域以上に悪く考える傾向があり、投資などもすぐに見直しにかかる」(帝国データバンク名古屋支店情報部・龍信行部長)。
 
 堅実さは個人消費にも反映されている。全国百貨店の地区別売上高では、9月まで東京と大阪がそろって7カ月連続前年割れだったのに対し、名古屋は10カ月連続の前年割れ。東京や大阪より一足早く、財布のひもを締めていたのだ。9月の8・7%減という東京、大阪以上の落ち込み幅についても「ドラゴンズの優勝セールがあると思って、買い控えていた」という説があるほどだ。
 
 名古屋は「貸し渋り」や「貸し剥がし」が他の地域よりは起きにくいと言われる。国内を代表する製造業の集積地であり、金融機関も乱立している。しかし、地元企業の経営手法の特徴は「借金嫌い」。そうした企業相手に各金融機関は「名古屋金利」と言われる特別低金利で、しのぎを削ってきた歴史がある。金融機関にとって貸し渋りは競争からの「脱落」に直結しかねない。
 
 名古屋の経済はいち早く、景気後退局面に陥った。現在のところはどこも悲観一色だが、この地域の特性から見ると、おそらく浮かび上がるのも早い--。結局のところ、名古屋に「最強」の看板が再び掲げられる確率は、依然として高いのかもしれない。

(週刊東洋経済)

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