北朝鮮人が「ミニスカ」を履くと何が起こるか 戻ってきた戦慄の「ファッション・ポリス」
このように華僑を含む外国人は取り締まりの対象外だ。しかし、北朝鮮国民が髪の色を変えるなどという忌まわしい犯罪に手を染めているところを見つかれば、話はまったく違ってくる。巨額の罰金を科せられるか、短期間とはいえ強制労働に就かされることにもなりかねない。
ファッション・ポリスが北朝鮮の街中に現れるようになったのは最近のことではない。時代によって多少の違いがあるとはいえ、このような糾察隊は少なくとも1960年代後半から存在していた。共産主義国(あるいは宗教的な国)の政府はどこも同じようなものだが、国民に道徳的に正しい装いをさせることが国家の神聖なる義務だと考えている。
以前は緩かった取り締まりだが…
とはいえ、糾察隊の取り締まりも、かつては今ほど大々的に行われているわけではなかった。もちろん、金日成・金正日時代の服装規定が今よりずっと厳しかったのは事実だ。たとえば、2010年代初頭まで女性が職務時間以外にズボンを着用することは許されていなかった。しかし、このような規定の適用は今に比べると驚くほど緩かったのだ。
2000年代初頭には、いつどこに行ったら糾察隊に出くわすことになるかを大半の女性は完璧に把握していた。そして、危険な時間帯に危険な場所に近づかないようにすることで、摘発の網をかいくぐっていた。
もちろん、このような作戦がいつもうまくいくわけではなかった。私が知るかぎりでも、パトロール隊に見つかって逃走しようとしたところ足を骨折してしまったという女性が1人いる(2000年ごろの出来事だった)。ただ、全体的にいえば、昔は取り締まりが実行されることは少なく、国民の間でも糾察隊の存在はさして大きな頭痛の種とはなっていなかった。
だが、今では状況が一変してしまったようだ。金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が服装や公衆道徳といったものを重視するようになったからである。正恩氏は、性格的にいって極めて過激な決断を下す傾向があり、伝えられるところでは現在の「礼節実施運動」は過去に例をみないほど大規模なものになっているという。
もちろん、このような風紀の取り締まりによって、北朝鮮経済が大きく足を引っ張られるわけでは必ずしもない。17〜19世紀の欧州を見れば、プロテスタント社会の服装規定は厳格そのものだったにもかかわらず、資本主義経済や科学技術は大発展を遂げている。服装が経済に及ぼす影響は比較的軽微といっていいだろう。
だが、現在の北朝鮮の風紀引き締めは、服装を超えて大きな広がりを見せているようなのだ。