北朝鮮人が「ミニスカ」を履くと何が起こるか

戻ってきた戦慄の「ファッション・ポリス」

つまり、最近強まってきた風紀引き締めの動きは、正恩氏が心変わりした可能性があることを示唆している。

何かの手違いだと思いたい。正恩氏は頭の回転が速く、残忍で冷酷な人物であるのと同時に、移り気で感情的になりやすいことでも知られている。風紀の取り締まり強化につながった何らかの出来事がしばらくの間は正恩氏に影響を与え続けるかもしれないが、いずれ取り締まりは緩和され、元の状態に戻っていくことも十分に考えられる。

北朝鮮の経済改革は危うい土台に乗っている

とはいえ、最近の風紀引き締め運動は、北朝鮮の経済改革が危うい土台の上に乗っかっている実態を改めて浮き彫りにした。確かに、北朝鮮経済は近年、大きく発展してきた。しかし、どれだけ目立った発展を遂げようとも、最高指導者の決断次第で一瞬のうちに崩れ去る。何しろ北朝鮮は、絶対君主制が現在も生き残っている、世界でも珍しい国なのだから。

絶対君主制の国では、君主の言葉が絶対の法律だ。そして、君主は自身の政治的な良識以外の何ものにも縛られることはない。つまり、君主の気が変われば、過去何年にもわたって繰り広げられてきた資本主義的な経済改革も、瞬時にして終わるということだ。

もっとも、このような展開を心配するのは時期尚早かもしれない。先述したように、厳格な服装規定や思想統制は、場合によっては資本主義経済の創出およびダイナミックな成長とも完全に共存しうる。また、市場経済を志向する現在の経済改革は北朝鮮国民全体の利益だけでなく、正恩氏自身の長期的な利益にもかなうことを念頭に置いておく必要がある。

確かに、資本主義的な経済成長が加速したら、共産主義を国是とする北朝鮮では国の舵取りが難しくなる。だが、経済が落ち込み始めたら、それこそ舵取りはほとんど不可能になってしまうに違いない。

いずれにしても、糾察隊の取り締まりが強まっているのは危険な兆候だ。率直に言って、由々しき事態である。ファッション・ポリスが静かに街から姿を消してくれるといいのだが。

(文:アンドレイ・ランコフ)

筆者のアンドレイ・ランコフ氏は韓国・国民大学教授。旧ソ連のレニングラード国立大学を卒業後、同大学院で博士課程を修了。北朝鮮研究の世界的権威で、北朝鮮の金日成総合大学に留学した経験もある。北朝鮮ニュース取締役。
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