フジテレビが探る「視聴者との新しい関係」 FNNjpプライムオンライン発のネット戦略
例えば、ある地域で知事選が行われても、なかなか他の地域では関心を集められません。しかし何らか国政と絡む話題があれば、東京でも盛り上がり、その反響が地方に逆輸入されるようなことも起こり得るでしょう。あるいはその地域単体ではバリューが生まれにくいニュースでも、他の地域の話題と組み合わせで、大きな反響をもたらすこともあります。
僕が以前に地上波の夕方ニュース番組の演出を手掛けていた頃、各地域のICカード事情をそれぞれ現地のアナウンサーに方言でレポートしてもらったところ、非常に高い視聴率をマークしたことがありました。全国の28局が連携することで、こうした反響を呼ぶコンテンツが作れるのではないかと考えています。
――局の垣根を越えることで、コンテンツにさまざまな可能性が生まれる、と。
その通りです。実は僕たちの構想には「FNN.jp」だけでなく、イギリス版で「FNN.uk」やフランス版の「FNN.fr」といった世界戦略まで早くもイメージされているんです。
もともと関東地方のテレビでしか見られなかったフジテレビの番組が、系列28局のネットワークが作られたことによって全国各地で見られるようになりました。そして今度はインターネットを使って、世界市場を視野に入れることができるようになったわけです。
ユーザーとテレビの新しい付き合い方を研究
――その一方で、こうしたネットメディアの活用によって、視聴率を取り戻す狙いは?
それはやはり考えています。昨今は若者のテレビ離れや、テレビ番組の質の低下が盛んに指摘されますが、こうした批判は今に始まったことではなく、僕が子どもの頃から言われていたことです。もちろんデバイスの多様化をはじめとする外部環境の急激な変化もあり、テレビはメディアとして安泰なわけではありません。
しかしまだまだTwitterでバズったネタよりも、テレビで報道された内容のほうが、老若男女に広く波及するのは事実です。「最近のテレビはつまらない」と思っている人にこそ、「FNN.jpプライムオンライン」でテレビの面白さをもう一度伝えられれば理想的ですね。
――そのために、現在感じている課題はありますか。
コンテンツとして、「これぞFNN.jpプライムオンライン」と思わせられるようなものが、まだつくれていないことでしょう。「ホウドウキョク」であれば、「『LivePicks』の動画、見たよ」とか、「『北斗の拳でわかるニュース』、面白いね」などと言っていただく機会が多々ありましたが、これからそういった看板になるコンテンツをつくっていかなければなりません。またVRやARを使った新しい表現についても、積極的に着手してきたいと思っています。
――最後に、「FNN.jpプライムオンライン」を今後どのように育てていきたいか、抱負をお聞かせください。
自戒を込めて思うことですが、ネットメディアはどうしても、伸び盛りの時期ほどPV至上主義に陥りがちな一面があると思います。PVが稼げたなら素直にそれを喜べばいいのですが、本来の目的を見失ってはいけません。自分たちが本当は何を伝えたいのかを、現場は常に意識しておく必要があります。
単にアクセス数がほしいだけなら、旬の話題だけを取り上げ続ければいいでしょう。しかし、「FNN.jpプライムオンライン」は、ユーザーとテレビの新しい付き合い方を研究するメディアです。現状、フジテレビは視聴率で苦戦中です。しかし昔から、批判されながらも新しいことに挑み続けてきた会社でもある。「FNN.jpプライムオンライン」は、そうした逆境を跳ね返す原動力になり得ると思っています。
(取材・文:友清 哲/編集:ノオト)
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