パナとNECが激突、空港「顔認証」ゲートの戦い 空港混雑、出入国審査官不足は解決するか

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そこで法務省はこれまで何度か審査官の緊急増員に踏み切っており、今年も279人を増員。それでも、政府が掲げる2020年に4000万人の訪日客受け入れの実現には十分でない。人手不足によって、厳格性が求められる外国人の入国審査がおろそかになっては一大事だ。そこで、「少しでも多くの審査官を外国人の入国審査に注力させるため、事前登録がいらず、厳格さも担保できる顔認証ゲートを採用することになった」(法務省入国管理局総務課の菱田泰弘補佐官)。

実際、取材に訪れた際に顔認証ゲート付近に配置されていた審査官は、モニターで全体の監視をする2名のみ。身長135センチメートル未満や認証エラーが出た客への対応が必要なため、有人ゲートを完全廃止することは難しいが、かなりの人員削減が可能なことは確かだ。

パナソニックとNECで火花

この顔認証ゲートを開発したのは、パナソニック。同社は1957年から取り組んできた監視カメラの技術を応用し、5年前から顔認証システムの開発に本格着手。今回の製品には、99%超という高い認証率に加え、家電から住宅まで幅広く手掛けるパナソニックならではの工夫が光る。

パナソニックは100台以上の顔認証ゲートを受注した(撮影:風間仁一郎)

パスポートスキャナーは家庭用キッチンと同じ高さにして使いやすさを追求。カメラをミラーの中に埋め込んだのも「人は鏡に映る自分の顔を見つめる習性があるため、撮られることを意識させずに正面からの顔写真を撮影しやすいから」(顔認証システムを手掛けるパナソニック システムソリューションズ ジャパンの遠田安令氏)。カメラで撮影した画像からベストショットのみ抽出して送信することで、サーバーの負荷を軽減できる点も他社にない特長だという。

顔認証ゲートの採用に当たっては、5社が参加する熾烈な入札が行われたが、価格に加えこうした使いやすさやデザインが評価され、パナソニックが落札した。2018年時点で計134台、総額約16億円分の受注を得ている。空の玄関で「顔認証のパナソニック」を周知することで、海外も含めた拡販を進めたい考えだ。

一方、パナソニックに鼻を明かされたのが、「顔認証世界一」を標榜するNECだ。2020年の東京五輪では、会場への入退場用に顔認証システムの採用が決まっている。

NECが得意とするのは、高い精度が要求される犯罪捜査や路上監視用などの生体認証技術。犯罪現場で撮られた画像を警察の持つ顔データと照合させるシステムは、北米などの警察で広く使われる。同じく厳格さが要求される空港でも、ブラジルの税関審査用システムや、アメリカのワシントン・ダレス国際空港やニューヨークのジョン・F・ケネディ国際空港の出入国審査ゲートなど、すでに採用の実績がある。

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