トヨタ「10代目カムリ」、発売1年の通信簿 日本の「セダン離れ」に楔は打ち込めたか

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2018年になっても勢いは続いている(撮影:尾形 文繁)

26位の意味は、対前年同月比の数値からも見えてくる。7月は実質20日ほどしか新車販売の営業日がなかったが、3244台の販売台数は、なんと744%の伸びだった。つまり前年同月比で6倍以上である。なおかつそれが瞬間風速でない証拠に、2017年の1~12月の通年でも36位で、販売台数は1万8854台、対前年比384%である。約半年間で、前年の3倍近い台数が売れたことになる。

2018年になっても勢いは続いており、1~6月の集計で34位、販売台数は1万2057台、対前年比1214%(11倍以上!)である。この成績は、33位のクラウンに続く。

カムリはこの1年、健闘したといえる

繰り返しになるが、クラウンは2018年6月にフルモデルチェンジし、6月時点で4000台超えの台数を記録して20位に順位を上げているので、今年の通年となると差が開く可能性はある。とはいえ、クラウンと比較しつつ数字を見ていくと、カムリはこの1年、健闘したといえるだろう。

その理由はいくつかあるだろうが、もっとも影響が大きいのは内外装のデザインだ。開発責任者のチーフエンジニアは、「理屈抜きで格好いいデザインを目指し、カーデザイナーの描いたスケッチをそのまま実現した」と、力説した。外観の顔つきも印象深いが、室内のダッシュボードは斬新な造形で、運転中に目にする内装の雰囲気に満足を覚える人は多いのではないか。

足回り(撮影:尾形 文繁)

そのうえで、低重心なつくりにより意のままの走りを実現したという。すべての車種がハイブリッドで、トヨタの先進安全機能をすべての車種に標準装備した。発売から1年間で、新型カムリは十分な成績を残したといえるだろう。

余談ながら、今年1~6月の半年間でカムリとクラウンを合わせた販売台数はトップ50の20位あたりと位置付けられ、「セダン離れ」が必ずしも当てはまらないとも言えそうだ。

低迷してきたカムリが、デザインのテコ入れと、価格に見合う装備や走行性能を満たせば、セダンを待っていた消費者がいることを証明してみせたのではないか。

輸入車を見れば明らかなように、きちんとした4ドアセダンを生み出せるかどうかが、その自動車メーカーの本当の力量を見分ける指標になると考えられる。カムリの健闘は苦しみながらも、向き合ってきたトヨタが出した「セダン離れ」への一つの解だ。

御堀 直嗣 モータージャーナリスト

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みほり なおつぐ / Naotsugu Mihori

1955年、東京都生まれ。玉川大学工学部卒業。大学卒業後はレースでも活躍し、その後フリーのモータージャーナリストに。現在、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員を務める。日本EVクラブ副代表としてEVや環境・エネルギー分野に詳しい。趣味は、読書と、週1回の乗馬。

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