「ミシュランシェフ」が体現する世界と戦う術 パリで起きている40年ぶりの日本リバイバル

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異国の地で戦うことは決してたやすくはありません。

手島さんも渡仏の際にはビザを取るのに一苦労し、フランス高級料理店で修業を積んでいるときには「日本人を表に出してはいけない。お客様から隠そう」という差別を店側から受け、ゴミ箱の陰に身を潜めなければならないこともあったそうです。

この状況をいつかひっくり返してやる。そう思いながら一心不乱に修業を続けたそうです(写真:ファクトリエ提供)

同じような境遇に置かれる人たちも多い中、日本人シェフのポテンシャルはフランスで徐々に花開いていきます。

従来の日本料理界では、蕎麦職人はとにかく蕎麦の道を究めるというように、長所を伸ばそうという考え方が主流でした。

一方、フランス料理は中級から最高級までにランクが分かれており、いろいろなジャンルのメニューを幅広く創作するスキルが求められます。

1つの道を究めることが美徳とされてきた日本人には不向きのように思えますが、勤勉さと繊細な感性を持っている日本人は、実はフランス料理への適性を備えていました。

日本人の気質が料理づくりに活かされている

手島さんは「日本人の感性は世界一」だと言います。

感性は言葉の数に比例すると言われており、日本人は、ひらがな・カタカナ・漢字といった異なる表記を自然に使い分けています。語彙の数は5万語以上で、英語の3倍。言葉での直接的な自己主張が重んじられる欧米に比べ、日本では言語として表れない余白や間(ま)に対しても敬意が払われています。

それだけを取り上げて日本人の感性のほうが繊細であると短絡的に決めつけるわけではありませんが、機微に触れようとする気質は間違いなく持っています。

今多くの日本人シェフがパリで活躍しているのも、その気質が料理づくりに活かされているのです。

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