安倍首相が石破氏との一騎打ちで狙うライン 総裁選で得票差が2倍以下なら1強に陰りも
首相の「政界の師」だった小泉純一郎元首相は、森喜朗氏(元首相)の退陣に伴う2001年春の総裁選で、「自民党をぶっ壊す」と叫んで地方票で圧勝し、議員票でも大逆転して首相の座を勝ち取った。また、細田派の源流となる旧福田派を率いた福田赳夫氏(元首相、故人)が現職の総裁(首相)として臨んだ1978年総裁選では、初めて導入された党員・党友による予備選で大平正芳氏(故人)に敗れ、「天の声にもたまには変な声がある」との"迷セリフ"を残して本戦出馬を辞退した例もある。まさに「地方票を制する者が総裁選を制す」という歴史だ。
ただ、この2回の総裁選は、議員投票の前に地方票の結果が公表されたことが「大逆転」につながったケースだ。ところが、今回は地方票が党本部での一括集計となり、しかも開票結果は議員投票の結果と同時発表となる方向だ。「地方票と議員票の連動を避ける」(執行部)という理由だが、首相サイドの「議員票囲い込み」を確実にする新ルールともみえる。このため党内には「地方票に強いとされる石破氏の封じ込めを狙ったもの」(石破派幹部)との見方がある。
総裁選での首相圧勝が既成事実化する中、各種世論調査での平均4割強の内閣支持率に大きな変化はなく、多くの調査では「不支持」が「支持」を上回る状況も続いている。特に、不支持の理由で「首相が信頼できない」が断然トップとなっているのは、野党の混乱や党内ライバルの弱体化が「首相への消極的支持の拡大」につながっているからだ。石破氏が首相の独裁的な政治手法を批判するのも、こうした「首相不信」を集票に結びつける狙いからとみられる。
地方票で拮抗なら「安倍改憲」も不透明に
首相サイドが恐れるのは「議員票は首相が圧勝したが、地方票は石破氏と拮抗した」という結果だ。そうなれば首相が嫌がる「ポスト安倍の本命は石破」という流れとなり、人事でも石破氏を処遇せざるを得なくなる。加えて、石破氏が異を唱える「安倍改憲」の前途も不透明となりかねない。さらに、現在の1強体制が揺らげば、参院選の結果次第では選挙後に進退問題が浮上する可能性も出てくる。
首相は11日から14日までの日程で、地元の山口県に入る。11日には党山口県連主催の会合に出席するほか、12日には父・晋太郎元外相の墓参りをした後、下関市内で講演する予定だ。総裁選出馬について首相自身はなお「じっくり考える」と繰り返すが、県連会合でのあいさつや下関講演が「事実上の出馬表明の場となる」(自民幹部)との見方も多い。
この地元入りは首相にとって「プチ夏休み」だが「英気を養うというより、永田町を離れて石破氏ら反安倍陣営の出方を見極める期間」(同)となりそうだ。その結果、首相がこれまでの「横綱相撲を振り捨てての石破氏制圧作戦」(同)を軌道修正するかどうかに、永田町の注目が集まっている。
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