安倍首相が石破氏との一騎打ちで狙うライン 総裁選で得票差が2倍以下なら1強に陰りも
そこで永田町スズメの間で浮上してきたのが「もう一つの勝敗ライン」だ。総裁選での首相の「勝ち方」が3選後の政局展開を左右するとの読みからで、「首相と石破氏の票差がダブルスコア以内なら首相の1強は崩れる」(無派閥有力議員)との見立てだ。
これを具体的票数に当てはめると、石破氏が合計200票以下なら首相は600票以上となり「トリプルスコア」で首相は安泰だ。逆に石破氏が合計270票以上となれば首相は540票以下にとどまり、「ダブルスコア」も割り込む。議員票によって変動はするが、地方票で石破氏が過半数(200票超)となればダブルスコア以上の敗北を免れる可能性は大きい。首相にとっても「党内民意の指標となる地方票で石破氏と拮抗する結果になれば、圧勝だと胸を張れない」(自民長老)ことになる。
ここにきて、党内第3勢力の竹下派55人が石破氏支持の方向となりつつあるのは、「3選後も安倍1強による独裁が続けば、国民の反発が強まり、参院選敗北につながる可能性が大きい」(参院幹部)との判断が背景にあるからだ。政界引退前は「参院のドン」と呼ばれた青木幹雄元官房長官が同派参院組を石破支持でまとめたのも、来年の参院選への危機意識からとされる。
一方、同派の衆院組では茂木敏充経済財政担当相や加藤勝信厚生労働相ら幹部が首相支持を明言している。このため、4月に派閥を受け継いだばかりの竹下亘総務会長の判断が注目されているが、同派内では「落としどころは実質的自主投票」との見方も出ている。
首相サイドは党員名簿を活用した「ローラー作戦」
同派は前身の旧竹下派時代から「一致結束箱弁当」と呼ばれた結束力が身上だった。それだけに「草刈り場になれば、竹下会長の求心力も低下する」(細田派幹部)との声はある。だが、「参院での主導権」を最大の強みとする同派は「首相が参院を支配する竹下派を敵に回せば、政権基盤が揺らぐ」(竹下派幹部)とする。そもそも青木氏は、竹下会長の兄の故・竹下登元首相の側近で、「今回の竹下派の動きは、竹下氏と青木氏が派閥の存在をアピールする高等戦術」との見方も少なくない。
そうした状況を踏まえ、首相サイドはこれまで、地方票の積み上げに全力を挙げてきた。首相が国会閉幕前後から、「公務もそっちのけ」(石破派幹部)で地方県連や職域団体の幹部らとの懇談などを重ねたのも、「地方票での石破氏の追い上げを阻止する戦略」(同)だからだ。
首相支持を断言して総裁選の指揮をとる二階俊博幹事長ら党幹部は、有権者となる党員・党友の名簿などをフル活用した「徹底したローラー作戦」(二階氏周辺)で地方票獲得を進める。併せて、首相サイドからは、陣営内の議員に対して「総裁選後に都道府県別の得票分布を検証し、各議員別の成績表の結果を、その後の人事に反映させる」(側近)との恫喝めいた声が伝えられている。
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