「ブルックス ブラザーズ」を救った男の正体 従業員たちに愛される「ミスターD」

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マークス&スペンサーに買収されたのは1988年のこと。ブルックス ブラザーズは1990年代のカジュアル衣料のブームに乗ろうと必死になり、社内ではバナナ・リパブリックのビジネスカジュアルをまねするように指示まで出された。

2001年には、アメリカとイギリスの国際結婚がうまくいかなかったことは誰の目にも明らかになっていた。マークス&スペンサーは世界的な景気後退と本国での業績不振から、ブルックス ブラザーズを売りに出した。アメリカの小売業者が同時多発テロに揺れる中、デル・ベッキオは2億2500万ドルという安値(13年前にマークス&スペンサーが買収した時の価格の3分の1以下)でブルックス ブラザーズを手中に収めることができた。

代表アイテムは国内製造にこだわる

最初の嵐のような数年が過ぎ、品質と企業イメージの両方に対するマネジメントがうまくいくようになると、小売りの売り上げは着実に改善するようになった。アメリカ国内の直営店は2001年には160カ所だったが、2017年には244カ所まで増加した(どちらの年も半数はファクトリーアウトレット)。また、ブルーミングデールズなどの百貨店にも製品を納入した。

現在のブルックス ブラザーズは今どきの小売業者らしく、ネット販売が最も急成長する分野となり、売り上げに占める割合も最大となっている。

ブルックス ブラザーズのカジュアルラインRed Fleece(レッドフリース)が運営するカフェ(写真:Karsten Moran/The New York Times)

ブルックス ブラザーズの顔とも言えるドレスシャツのバリエーションは約1000種類で、売り上げの30%を占めている。現代のトレンドや体格のいい若者たちのことを考慮し、シャツにはトラディショナルとマディソン、リージェント、そして最も細身のミラノという4つの型が用意されている。

人気のノーアイロンシャツ(マレーシア製)など製品の多くは外国製だが、ブランドを代表するアイテムの多くは米国内で製造することにこだわっているとデル・ベッキオは言う。

たとえばネクタイはニューヨーク市のロングアイランドシティの工場で製造されている。ラベルには星条旗と「ブルックス ブラザーズ。誇りとともにアメリカ合衆国ニューヨークで製造」との言葉が刺繍されている。

(写真:Karsten Moran/The New York Times)
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