「ブルックス ブラザーズ」を救った男の正体 従業員たちに愛される「ミスターD」

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(写真:Karsten Moran/The New York Times)

アメリカ国内にはほかに2つの工場がある。1つはマサチューセッツ州ヘイバリルにあり、紳士服のスーツやジャケット、ズボンを製造している。2008年には300人だった従業員は今では550人に増えた。もう1つはノースカロライナ州ガーランドにあり、250人の従業員が定番の140ドルのオックスフォードシャツを作っている。ガーランド工場は赤字だとデル・ベッキオは言う。

この町の人口は1000人に満たない。もしこの工場を閉鎖すれば、町のほぼ半数の人々の生活の糧が失われるということは承知しているとデル・ベッキオは言う。

移民たちに英語を教える教師を雇う

「私たちが下す決断の多くは、その点にも留意している」と彼は言う。「今年は赤字にはならないかもしれないと私たちは毎年、言い続けている。だからこそ改善を目指し続けている。だが力の続くかぎり、私たちは工場を閉鎖するつもりはない」。

工場で働く移民たちに英語を教える教師を雇い始めたのも、社会貢献を重視するデル・ベッキオならではだ。ヘイバリルの工場の従業員にはアフガニスタン出身者もいれば、ポーランドやミャンマーからの移民もおり、彼らが話す言語の数は30に上る。

「不法移民は雇用していないが、最近は難民の流入を止める法律ができてしまった。わが社の工場にとって技術の高い労働力の大きな源だったのに」と彼は言う。

デル・ベッキオと妻のデブラ、それに重役たちは毎年クリスマスシーズンに国内の工場を訪れる。ダンスの輪に加わり、従業員たちとイタリア語やスペイン語で言葉を交わすデル・ベッキオのことを、みんなは「ミスターD」と呼ぶ。

「彼が工場に足を踏み入れると、誰もが拍手をする」と、ロングアイランドシティ工場のプロダクションマネジャーを務めるエイドリアナ・ルシンは語る。「まるでスターで、みんなミスターDと一緒に自撮りをしたがる」。

(執筆:Teri Agins記者、翻訳:村井裕美)
©2018 New York Times News Service

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