今のGAFAは「独裁政権の黎明期」に似ている 覇権4強が得意とする「制度戦略」とは何か
「見えないところ」に強みを作る
この本の優れている点は、何よりGAFAを客観的に捉えようとしているところだと思います。変に礼賛するのでもなく、強く批判するのでもない。しかも、公開されていながら一般的に知られていない情報を使って、GAFAの実態を描こうとしています。
もちろん公開情報をベースにしているがゆえに、臆測に頼らなければ書けない部分も出てきます。著者のスコット・ギャロウェイ氏はそのあたりの表現もうまい。「わからない」と書くのではなくて、想像をかき立てるような、ときに哲学的な表現を用いています。
また、彼らの競争の源泉は何か、ということを、具体的な事実を土台として紹介しているところも本書の魅力だと思います。もちろんそれぞれのサービス自体の優劣もそうですが、じつはサービスではないところに競争優位があるという指摘は的を得ていると思います。
たとえばアマゾンでいえば数千の倉庫に投資をしているといった話、グーグルであればデータセンターや海底通信ケーブル、そしてアップルの真の強さの源は店舗にあるだろう、など基本的なことかもしれませんが、重要な事実を紹介しています。普段、私たちがなかなか意識しない部分に競争の源泉を作り上げることは、競争戦略として魅力的な打ち手です。
GAFAは今や誰もが知っている、誰もが使っているサービスを提供しています。彼らは顧客への見せ方がまずはとても作り込まれており、高いブランド価値も持っています。それと同時に、多様な利害関係者との関係性を戦略的に考える、かなり巧妙な「制度戦略」を行うことで各国での事業を有利に進めています。本書がこの事実にもしっかり触れているのも好感を持ちます。
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