あの発言は「杉田水脈氏だけの問題」ではない

「自民党と自称保守」を支配している根本思想

意外に思われるでしょうか。たしかに、政府自身は(あるいは、「教科化」を支持する教育学者たちの多くは)、教科化を中心とする道徳教育の強化・推進は、「いじめ」をなくすことを何よりの目的としている、などと言っています。

しかし、違います。これは明らかに方便であり、政府が道徳教育を推進する真の目的ではありません。彼らのホンネは、国民の「生産性」の向上と、それによる「経済成長」です。そのためにこそ、道徳教育が必要だと、彼らは考えているのです。

道徳を教育すればお金が儲かる

このことは、私などがとやかく言うよりも、当事者の口から直接語ってもらったほうがよいでしょう。たとえば、次の文章を読んでみてください。

「我が国は今後、人口の減少、中でも生産人口の大幅な減少に直面する。その打開策として、これまで生産に参加していない人や、すでにリタイアした人の活用が考えられる。『一億総活躍社会』はそれを言ったものだ。同時に現在の国民が質を向上させ、これまでの何倍もの生産性を上げることが必要となる。その点において教育に期待されるところは大きく、教育の在り方はその立場から見直されなければならない」

何も断りがなければ、これは件の杉田氏の記事からの引用ではないかと、思われるのではないでしょうか。そう言いたくなるほど、「生産性」を前面に押し出しているこの論者は、何を隠そう、安倍首相のブレーンとして「教育再生実行会議」の委員などを務め、そこで道徳の「教科化」を提言した人物の1人でもある、麗澤大学教授・八木秀次氏にほかなりません。しかも彼は、「なぜ今、『道徳』教育が必要なのか」と題して、こう書いているのです。

彼の評論は、こう続きます。あるデータによると、「うそをついてはいけない」「他人に親切にする」「ルールを守る」「勉強をする」という4つの「基本的なモラル」の教育を、すべて受けた者は、1つでも欠けた者よりも、年収で約57万円、多くの所得を得ている。さらに、1つも教育されていない者と比べた場合、その差は約86万円にもなる。そうすると、「年収が多ければ当然、納める税額も多くなる。社会保障関係の納付金も多く、受給額は少ない」。したがって、「道徳教育」は「国家・社会全体として活力を産み、利益になるということだ」。

こう論じて、彼は、「教育で国民の質を上げることが経済的な効果を持つことがわかる。教育を国家戦略として位置付け、道徳教育を重視するのはその意味においてだ」と、この評論を締めくくっているのです。

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