被災しても守る「ひとり親世帯」の子の居場所 大阪北部地震で移転を余儀なくされた学習塾
「(地震の時は)すごく怖くて。すぐに机の下に入ったんですけど、その後ずっと泣いてしまって。地震の後に塾が1週間休みだったので、『ああ、もう塾ってなくなるのかな』と思って。そしたらすごく寂しくなっちゃって。だけど、先生たちが『あるよ』と言ってくれて。『また行ける』と思うと嬉しくて。いつも以上に大事な場所だなと再確認しました」。中学3年生から「渡塾・高槻校」に通う高校3年生の横川遥那さんの言葉です。
中学2年生から「渡塾・箕面校」に通う高校3年生のAくんも、「(一時的にでも塾がなくなるのは)結構きついですね。逃げ場として来ている子が多いと思うので。俺も最初はそういう節があったので。そこが急になくなってしまうのはメンタル的にきついです。逃げ場として来ているので、逃げ場がなくなる。嫌な状態だけの場所から逃げて来ているので、嫌な状態だけでずっといなきゃいけない状態になっちゃう」と話してくれました。
子どもたちにとって「渡塾」は、「学習機能」だけでなく、「居場所の機能」をも持った場所となっていたのです。
ひとり親世帯の子どもたちの心の拠り所「渡塾」
「あっとすくーる」が運営する「渡塾」に通う子どもの多くはひとり親世帯の子どもです。
「勉強が苦手だったり嫌いだったりする子が多かったり、子どもが家に帰ってくる時間に親御さんがまだお仕事で家におられないようなご家庭が多かったり。中には、不登校の子や警察のお世話になる子もいます」と話す「あっとすくーる」代表・渡剛さん自身も、母子家庭で育ちました。「自分と同じ境遇の子たちを支えたい」との思いで、大学3年生の年に「あっとすくーる」を立ち上げました。ひとり親世帯の子どもたちは授業料が半額になるとともに、奨学金制度も設けられています。また、講師1人につき生徒2人の個別指導で、講師と生徒との信頼関係を築きながら一緒に勉強できる環境づくりをしています。
「週に1回授業を取ってもらったらいつでも来ていいよと言っているんです。授業がない時間でも。自習しにくる子もいれば、とりあえずここに来て漫画を読む子も」と渡さん。
心にモヤモヤを抱えた子どもたちがいつでも来られる場所を用意しているのです。
「個室も用意して、講師と子どもが1対1で話したいときに使っています。今までにあった話では、授業中にいきなり泣き出す子がたまにいて、『どうしたの?何があったの?』と話を聞く時などに使っています。話を聞いてみると、『学校でちょっと嫌なことがあった』とか『出てくる前に家で嫌なことがあった』と。話を聞いて、気分を落ち着けて、授業に戻れたら戻るし、授業までに戻るのが難しかったら個室で話を聞くということもやっています」
GARDEN Journalismが取材をさせていただいた日も、塾生のAくんは開講するだいぶ前に塾に来て勉強していました。「居場所になっています。安心できるというか。アットホームな塾なんですけど、それが良くて。家にいるより落ち着きます。来たら必ずこの人がいるっていう安心感があります。職員さんがフレンドリーに話しかけてくれて。楽しいことも話すし、悩み相談とかも。ここにいると元気になる。元気な人と話していると元気になるじゃないですか。俺も最初ここに来たときに元気がなくて、人見知りで、人間不信で。ちょっと話したらシュンとしていました。でもそれもだいぶ和んできて、人間不信もなくなりました」