「はい、そうです。おおまかに言うと、西日本は『豚まん』、東日本では『肉まん』と言うことが多いようです。何故『豚まん』と呼ぶかというと、関東で肉と言えば豚肉をイメージしますが、関西では牛肉です。わが社の豚まんは豚肉を使っているので、この点から『豚まん』になります。創業当時は、牛肉や鶏肉を使った『牛まん』、『鶏まん』もあり、中で一番人気が『豚まん』でした。その名前を今も踏襲しているわけです」
この冷蔵・冷凍豚まん、多い時は1日10万個以上を製造します。クオリティの向上には毎日の努力が欠かせません。
「いい材料、いい加工、そしていい加熱が大切なんです。玉ねぎも肉も、いつも同じものが入ってくるという思い込みがいけない。気温差など自然の変化に対応していかなければいけません。豚まんは皮に断熱作用があり、冷却しても芯まで冷えません。それで、蒸したての豚まんを真空冷却して急激に温度を落とすことで、中までしっかり冷やして保存を可能にしています」
長年現場で豚まんを作り続けてきた東社長の言葉には重みがあります。そして、厨房に入っていたからこそできる新メニューの開発にも意欲的です。
「豚の角煮とチンゲン菜が入っている“角煮豚まん”を作りました。70周年を記念した難波の店の限定商品です。他にも、海老餃子や海老焼売、カレーまんも作りました。今度、カレーまんデラックスに挑戦しようと思っています」
メニューは、東社長と工場長と料理長で考えていますが、新しい試みとして、マイ豚まんのレシピを募集したこともありました。題して「豚まん“具”ランプリ」。優勝賞金10万円で、およそ1100件の応募があり、社員一同、驚いたと言います。豚まんは関西人に愛されているんだなぁ、と実感しました。
優勝したのはみそと根菜を入れた『肉みそまん』でした。準優勝はシチューを入れた『ビーフシチューまん』。各々商品化して売り出しました(現在は、販売していません)。常に新しい試みに挑戦する気概が、「蓬莱本館」の発展を支えています。
工場増設視野、関東への浸透目指す
もう一つ聞きたかったのは、インバウンド需要でした。
「インバウンドの影響は少ないです。中国の方は、日本に来てまで中華料理を食べたいとは思わないのではないでしょうか。海外ということなら、だいぶ前にヤオハンさんのアメリカ店で販売したことがあります。当時4個8ドルで売っていました。でも、まずは足元、日本からです。関東の方に大阪の味を広げたい、と考えています」
現在、千葉工場は1000坪。さらに、増設も視野に入れて、関東へのさらなる浸透を目指しています。ここで東社長が最後に付け加えられた言葉が印象的でした。
「設備投資も慎重に考えて進めたいと思います。厨房で、工場で、お店で、皆が汗をかいて稼いだ有難いお金です。無駄遣いしないよう、よくよく心掛けたいと思います」
高校時代から50年。包み続けた肉まんの味を守り、地道に大阪の食文化を全国に広げて行っていただきたい、と思いました。
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