"貯蓄から投資へ"の流れが「幻想」だった理由 衝撃!なぜ投信は突然33兆円も激減したのか

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藤野:あとは、トランプ相場で株式市場が盛り上がった時、投資元本が回復したものだから、そこで解約する投資家が増えたと記憶しています。長期投資や企業を応援するという理念がまったく感じられない資金が、相当程度、投資信託にも入っていたのでしょう。それが抜けたことも、投資信託の市場規模が大きくならなかった原因のひとつだと思います。

渋澤:でも、それによって質は上がったじゃないですか。

藤野:いや、でも市場規模はシュリンク(縮小)しているわけでしょ。ダメじゃないですか。

渋澤:それはそうですが、目先のリターンにしか興味がないような投資家が抜けてくれれば、ファンドに残ってくれる受益者の質は確実に上がります。決して悪いことばかりではない。

丸井「tsumiki証券」を業界の新陳代謝加速のきっかけに

中野:短期的な資金が出入りを繰り返すなかで、徐々に残高が減ってきたのが今までの流れでしたが、一方でそういう人たちとは明らかに違う顔を持った、新しい投資家が入ってきたのは事実です。確かに、今はまだ統計に表れない、本当に小さな動きでしかありませんが、コツコツ積み立てていく動きが今後も続くことによって、投資信託の質は変わっていくはずで、金融改革への取り組みは確実に変化を生んでいると信じています。本当に大事なのは、これからどう変わっていくかということではないでしょうか。

企業価値だけでなく、物事の本質を見極める力がある。「草食投資隊」が個人投資家から支持されている理由はここにある(左からセゾン投信の中野晴啓社長、コモンズ投信の渋澤健会長、レオス・キャピタルワークスの藤野英人社長兼CIO)(撮影:今井康一)

渋澤:そういう意味では、資産運用ビジネスの新陳代謝も進むでしょうね。私たちは、明らかに新しい層を対象にしていますが、そうではない運用会社もたくさんあります。旧来の運用会社は、どんどん衰退していくのではないでしょうか。9月から流通の丸井グループが、「tsumiki証券」を立ち上げて証券ビジネスに参入しますが、これも業界の新陳代謝を加速させるきっかけになるといいですね。異業種からの参入に期待します。

中野:そうですね。つみたて専門の証券会社という、とてもわかりやすいビジネスモデルです。旧来の証券ビジネスに対するアンチテーゼになってもらいたいですね。

藤野:20代、30代、40代の若い、年金などお金に対する不安が大きな世代にフォーカスしていくビジネスですから、とても意味がありますし、ぜひとも成功していただきたいと思います。

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