「明治維新150年」を祝わない日本人の不思議 石橋湛山が考える維新の「真の遺産」とは?

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現代の日本人はなぜ、維新150周年を祝賀しないのか(写真:iLand/PIXTA)

数週間前のある日、今年が明治維新150周年だということにふと気がついた。明治維新は近代日本の礎であるにもかかわらず、大規模な国家式典が行われるわけではない。安倍晋三首相が演説で明治維新に触れることはこれまでにもあったが、このテーマで本格的なスピーチを行ったことは一度もなかったように思う。

明治維新は米国の独立記念日やフランスの革命記念日のようなものなのに、現代の日本人はなぜ、維新150周年を祝賀しないのか。

明治維新のおかげで西洋に植民地化されなかった

筆者がなぜこのようなことに驚いているのか、少し説明が必要だろう。私が日本に興味を持つようになったのは、米コロンビア大学での授業がきっかけだ。大学に入学したのは、ベトナム戦争真っ最中の1969年秋で、私はベトナム史を勉強したいと思っていた。しかし、そのような授業は行われておらず、代わりに中国と日本に関するセミナーを履修した。

当時、私は日本について、ほとんど何も知らなかった。小さな頃に親が買ってくれた日本製の玩具は大抵3日で壊れた──それが日本について知っていることのすべてだったといっていいくらいだ。だが、波瀾に満ちた日本の近代史は、私を夢中にさせた。

タイを除けば、日本はアジアで唯一、西欧の植民地化を免れた国だ。このことは反戦運動に身を投じていた私にとって、非常に重要なポイントだった。明治維新のおかげで、日本は属国にならずに済んだだけではない。経済的にも繁栄した。さらに1868年の「五箇条の御誓文」によって、封建主義は終わりを告げ、身分制度から解放された国民は職業の自由を手にする。大久保利通、福沢諭吉、大隈重信といった明治の指導者は真のヒーローだと、私は思った。

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