「明治維新150年」を祝わない日本人の不思議 石橋湛山が考える維新の「真の遺産」とは?

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日本人が明治維新を祝わないのはなぜか。日本の友人に聞いても、みなあいまいな答えしか持ち合わせていなかった。一つ見えてきたのは、明治維新を戦争時代の暗い歴史と結び付けて考えている日本人が少なくないということだ。

埼玉大学のロジャー・ブラウン教授(日本近現代史)は、次のような事実を紹介する。かつて日本政府が明治維新100周年を祝おうとしたとき、時の佐藤栄作首相が立ち上げた準備会議には軍国主義の知識人が含まれており、批判を浴びた。米国人実業家のリック・ダイク氏は1968年当時、九州大学で学んでいたが、京都大学の学生が「明治百年記念式典」に反対するデモを行い、それが全国に広がっていったことを覚えている。

日本を破綻へと導いたと考えている人もいる

米スタンフォード大学のピーター・ドウス名誉教授(日本近代史)は、こう述べている。明治維新が「民主主義や経済的繁栄ではなく、日本を超国家主義や植民地支配の拡大、すなわち破滅へと導いていったと考えている日本人は多い」。

戦後日本の指導者では、明治維新を進歩的でリベラルな近代化のプロセスと見た人物はほとんどいない。数少ない例外が石橋湛山だ。『週刊東洋経済』歴代編集長の中で最も高名な人物であり、1950年代後半には短期間ながら首相を務めた。前出のダイク氏はこう話す。

「明治天皇が1912年に崩御されたとき、当時駆け出しの記者だった石橋は次のように書いた。明治時代の真の遺産とは、日本が帝国の仲間入りを果たしたことではない。五箇条の御誓文によって日本が民主主義と言論の自由を重視するようになったことだ、と。(明治維新100周年となる)1968年に、日本の学生はハノイ空爆で米国に加担する日本政府に対して反戦デモを繰り広げたが、これを見た石橋は、明治の遺産が彼らの中に生きている、と考えた」

明治維新の遺産をどう考えるか。私には、石橋のような見方のほうが腑に落ちるのだが。

リチャード・カッツ 東洋経済 特約記者(在ニューヨーク)

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Richard Katz

カーネギーカウンシルのシニアフェロー。フォーリン・アフェアーズ、フィナンシャル・タイムズなどにも寄稿する知日派ジャーナリスト。経済学修士(ニューヨーク大学)。著書に『The Contest for Japan's Economic Future: Entrepreneurs vs. Corporate Giants 』(日本語翻訳版発売予定)

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