「日本の民主主義」が世界で評価されない理由 池上彰が教える、「民主主義」とは何か

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「民主主義」が示すもの(イラスト:ケン・サイトー)

世界を見回すと、自由な経済活動を重視する資本主義体制でありながら独裁制をとる国家もあります。たとえば、世界有数の産油国であるサウジアラビアや海外企業を積極的に誘致して発展したシンガポールなどです。また、経済的平等を重んじる社会主義的な政策をとりながら、民主主義と両立している国家もあります。スウェーデンやノルウェーなどの北欧諸国がこれにあたります。

ただし、資本主義で経済活動を自由にしようとすると、国民の考え方も自由にしていく必要が生じるため、資本主義と民主主義には親和性があります。日本も、資本主義と民主主義の体制を両立させている国家の1つなのです。

ちなみに、北朝鮮は独裁制の社会主義国家でありながら、「朝鮮民主主義人民共和国」と、国名に「民主主義」が含まれています。「民主主義」をわざわざ国名に入れている国は、およそ民主的でないというのがお決まりのパターンなのです。

「立法 」「 司法 」「 行政 」の三権分立制度

ところで、日本の民主主義を担保しているのが「三権分立」という制度です。日本国憲法では、三権分立を国の基本制度としています。三権とは、法律を作る「立法」と、政策を実行する「行政」、憲法違反を裁く「司法」の三機関。立法、行政、司法がそれぞれ独立し、互いに監視することで、権力の過度の集中を防ぐための仕組みです。

国会は法律を作る立法府で、国会が作った法律や予算に基づいて政策を実行するのが行政府、つまり内閣総理大臣を長とする内閣です。そして、国会が成立させた法律が憲法に違反していないかを判断し、行政府の行為が憲法に違反していないかをチェックするのが、最高裁判所を頂点とする司法府です。

以前、安倍総理が国会で「私は立法府の長であります」と答弁し、物議を醸したことがありましたが、総理大臣は「行政府の長」であって「立法府の長」ではありません。単なる言い間違いだとは思いますが……。

国会は、国民が選挙で選んだ国会議員によって構成され、国民の民意を反映しています。また、最高裁判所の裁判官も、国政選挙のときに国民審査が行われ、裁判官として適切かどうかが国民によって判断されています。

三権分立の構造(イラスト:ケン・サイトー)

内閣がきちんと仕事をしていないと国会が判断すれば、内閣不信任案を決議することがあります。これとは逆に、内閣は衆議院を解散して、国民の意思を問うことができます。

また、内閣は最高裁判所の長官を指名し、裁判官を任命する一方で、裁判所は行政の命令や規則、処分などを審査します。そして、国会には弾劾(だんがい)裁判所が設けられ、裁判官を裁判することができる一方で、裁判所には法律が憲法に違反していないかを審査する違憲立法審査権が与えられています。そのため裁判所は「憲法の番人」と呼ばれています。三権は、ジャンケンのグー・チョキ・ パーのような関係を持っているのです。

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