格差を拡大させる韓国「働き方改革」の実態 しわ寄せは低所得者層に

拡大
縮小

造船大手の現代重工業<009540.KS>、小売り大手のロッテショッピング<023530.KS>や新世界百貨店<004170.KS>などは、社員の残業を防ぐため午後5時半にコンピューターの電源を切るようになった。

賃金コスト上昇のため、韓国では多くの店舗が閉店時間を午前0時から午後11時に早めている。

「従業員の勤務時間に柔軟性を持たせようとしており、店舗のほとんどで営業時間を短縮している」と、ロッテショッピングの社員はロイターに匿名で語った。

富裕層が集まるソウル江南区でフランスパンの店を営むLee Jae-kwangさんは、夕方早々に従業員を帰らせ、以前より1時間早い午後10時に自分で店を閉めると言う。「人を増やすことなど全く考えていない。大幅な賃金引き上げは私たちにとって、まさに経済的負担となっている」

希望の兆し

構造的な経済問題のいくつかに文大統領が取り組んでいることは間違いない。2017年、若年層の失業率は9.8%に達したが、これは全労働者の失業率のほぼ3倍に当たる。

その一方で、韓国は、経済協力開発機構(OECD)に加盟する36カ国の中でメキシコとコスタリカに次いで労働時間が3番目に長い。労働生産性の伸びは昨年、OECD加盟国の中で19位にとどまった。

ホワイトカラー労働者にとって、政府のこうした新たな政策は息抜きとなっている。

「上司より早く帰るなんて、昨年は考えたこともなかった」と、ソウルで小売り関係の事務職に就く29歳の男性は語る。「今は毎日でも映画を見に行けるし、会計学の夜間クラスを受講することもできる。文字通り、会社のコンピューターがシャットダウンされるからだ」

低所得層が第1・四半期に打撃を受けた一方で、平均家計所得は前年同期比3.7%増と過去4年でもっとも急速に拡大した。韓国統計庁によると、上位20%の所得は9.3%増え、賃金格差は過去最悪のレベルに達した。

加えて、国内需要はまだ喚起されていない。消費マインドは文氏が総選挙で勝利した昨年5月以降、もっとも低下している。

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