金正恩氏、女性の扱いはかなり西洋的だった

かなり目立つ美人妻、李雪主氏の正体

だが、聖愛夫人の地位は正淑夫人同様、後継者をめぐる権力闘争に関係づけられていた。一時は聖愛夫人の実子が日成氏の後継者になるとみられていたが、正日氏が後継者になることが決まると、夫人の子息は在外公館に赴任を命じられ、事実上の国外追放になった。夫人自身も表舞台から姿を消した。

「金王朝」を継承した正日氏は、まれに見るプレイボーイだった。正日氏は女性にもてた。魅力があり、ユーモアのセンスにあふれ、女性に優しかったからだ。もちろん、同氏が王子のような立場にあったことは女性を惹きつけるのに好都合だったろう。しかし、同氏は多くの女性にとって「理想の男性」でもあったのだ。しかし、正日氏には特定の女性ときちんとした結婚生活を営むことには関心がなかった。正日氏は次々に違う女性と関係を持っては同棲し、そのうちの1人、元舞踏家の女性が正恩氏を出産した。

しかし、こうした女性たちの名前が国営メディアに出ることはなかった。エリート層を除く大多数の国民がこうした女性たちの名を耳にすることもなかったはずである。

西側の流儀を取り入れる正恩氏

その意味で、夫人同伴で公の場に姿を見せる正恩氏の行動は驚きに値する。これまでの北朝鮮には見られなかったものだ。正恩氏がこのような行動をとるようになった背景には、父・正日氏の激しい女遊びに対する反発心があるのではないかと私は見ている。正恩氏は父親の行動を恥ずべきものと考え、妻や女性に対して父のような振る舞いはしないと心に決めたのではないか。

正恩氏がよき家庭人になろうとしているのだとしたら、その試みは今のところ成功している。だが、同氏はまだ若く、誘惑も多い。何しろ、宮殿に住まう王なのだ。全国から集められた選りすぐりの美女たちが、玉の輿を狙って正恩氏の気を惹こうと躍起になっている。今後、どうなるかはわからない。とはいえ、正恩氏は北朝鮮の最高指導者としては初めて、後継者問題とは関係なく夫人を表舞台に登場させた。

現に2012年以降、正恩氏と行動を共にする李雪主夫人の姿が幾度となく目撃されている。高価なブランド物の服を身にまとい、国民が着用を義務づけられている「金日成・金正日バッジ」はつけていないことが多い。北朝鮮の国営メディアは最近、金一族の最高指導者以外にはほとんど使われることのなかった特別な敬語を夫人に対しても使い始めている。

夫人の名前が国営メディアに出なくなった時期も一時あったが、これは正恩氏との関係に問題が生じたからではなく、妊娠、あるいはその他の健康上および個人的な事情によるものだろう。

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