日本とフランス、「飲み会」はこんなに違った 仕事の時と違う顔を見せるなんてありえない

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くみ : 日本でも、職場の人間関係はすごく重要で、ともすると仕事ができる以上にキャリアを左右する可能性があると思われていると思う。ただ、それも仕事の一部とみなして、人間関係を密にする時間も就業時間の中に含めるのは、フランスの大きな特徴じゃないかしら。

日本ではそれが含まれないからこそ、本来就業時間外は自由なはずなのに、上司から夕食に誘われたらほかにプライベートの予定が入っていても断りづらかったり、頻繁にある職場の飲み会に、たまには顔を出さないといけないような気持ちになったり、と少し複雑な気がする。そういうのがすべて就業時間内に含まれていれば、仕事とプライベートとの兼ね合いで悩むことも少なくなりそう。

フランス企業ではチームビルディングが盛ん

エマニュエル : そう考えると、職場のコミュニケ―ションの強化を目的とする飲み会は、Potよりも「チームビルディング」のほうが近いのかな。これは、違う部署の社員が同じチームになってさまざまなアクティビティを行うもので、アクティビティもサッカーや森での宝探しやサバイバルゲーム、1つの絵画や彫刻を仕上げるなどアート活動、テレビゲーム大会など幅広いんだ。

「アウェイデイ(away day)」という社員のコミュニケーション向上を目的とした日を設け、一日中アクティビティをして、夜はカクテルパーティをするといったことも多くのフランスの企業で行われているよ。これはPotとは違って、全員強制的に参加(カクテルパーティはいつ帰ってもいい)なんだけど、すごくリラックスしてコミュニケーションをとれるいい機会になっているんだ。

くみは飲み会とPotどちらも体験した身としては、どっちのほうが好きなの?

くみ : そうね、メンバーと状況次第かしら(笑)。でも、どちらにしても形式化したり義務化したりすると窮屈になってしまうから、柔軟で、選択肢が多いほうがいいな。参加・不参加の自由も含めてね。

エマニュエル:僕は飲み会にしろPotにしろ、あまりに頻繁にやるのは嫌かな。職場のコミュニケーションは大事だけど、強制されると逆につながりを壊してしまうことになるよ。だって長々とスピーチを立ちながら聞くのも疲れるし、しょっちゅうPotがあると、いいかげん行きたくなくなってしまうからね。

佐々木 くみ 執筆家、イラストレーター

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ささき くみ / Kumi Sasaki

東京生まれの30代。フランス在住10年を超す。2017年10月に、エマニュエル・アルノーと共著で自らの体験をつづった『Tchikan(痴漢)』をフランスで出版。イラストも手掛けた。

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エマニュエル・アルノー 小説家

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Emmanuel Arnaud

1979年生まれ、パリ出身。2006年より児童文学、小説、エッセーをフランスにて出版。2017年にThierry Marchaisseより佐々木くみとの共著『Tchikan』を出版。2000年代に数年にわたり日本での滞在、および勤務経験を持つ。個人のサイトはこちら

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