東名「大和トンネル」がいつも渋滞する理由 自然に誘発してしまうメカニズムがある

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サグや上り勾配で自然に速度が低下する区間の渋滞解消のため、現在さまざまな試行が続けられている。

高速道路の路側に、車の速度よりも少し速い光を連続して発光させる仕組みを設けることで、運転者に速度を落とさないように誘導する「速度感覚コントロールシステム」、あるいは「速度回復誘導灯」と呼ばれる設備により渋滞の発生を防ぐ取り組みが各地の高速道路や首都高速などでも行われており、一定の効果があるとされている。

2016年8月12日午前6時 すでに激しい渋滞の東名下り(筆者撮影)

合流部やトンネルの前後での車線の拡幅も進められており、物理的な制約で難しかった東名・大和トンネルでも東京オリンピックまでの完成を目指してトンネルの前後4~5kmの上下線で、1車線当たりの幅を少し縮めてもう一車線を捻出する工事が続けられている。

とはいえ、新東名の御殿場から海老名までの未開通区間が全通する数年後にはさらにこの付近の混雑が予想されるため、抜本的には、横浜町田~厚木間の完全な片側4車線化が望まれるだろう。

一方、混雑の緩和を通行料金の変更でコントロールする方法もある。今年のお盆期間は、8月の11日(土曜日で祝日)、12日(日)が都会からの下り線の混雑のピークとなることが予想されている。仮に10日に休みが取れても、長距離区間を利用する場合は、通行料金が3割引となる休日割引の効果が大きいので、11日に高速に乗ろうという気持ちが働く。通行料が1万円であれば7000円となる。3000円の差は大きい。

集中を避けるために

この集中を避けるため、高速道路各社は今年、試験的に11日と12日の休日割引を9日(木)と10日(金)に振り替えると、7月4日に発表した。11・12日よりも9・10日のほうが安くなるため、9~12日の4日間で通行量が平準化されることを狙った対策であり、一定の効果が見込まれている。

私も東京の自宅と愛知県の実家をお盆の期間に往復することが多いので、出発時間を朝ではなく夕方にしてみたり、1日余分に休暇をもらって渋滞のピークの翌日に実家からの出発を振り替えたりとこれまでいろいろトライしてきた。

また、事故による思わぬ渋滞にはまり、このまま高速道路に乗り続けるか一般道路に降りて渋滞区間を迂回するか悩み抜き、一般道に降りたもののこちらも大渋滞で、結果としては乗り続けたほうが早かったであろう失敗を幾度となく繰り返してきた。今年も、高速道路各社が発表する渋滞予想と上述の新たな試みも含めたさまざまな情報を分析して、快適な移動の方策を探り始めたところである。

佐滝 剛弘 城西国際大学教授

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さたき よしひろ / Yoshihiro Sataki

1960年愛知県生まれ。東京大学教養学部教養学科(人文地理)卒業。NHK勤務を経て、NPO産業観光学習館専務理事、京都光華女子大学キャリア形成学部教授、リベラルアーツ・ジャーナリスト。『旅する前の「世界遺産」』(文春新書)、『郵便局を訪ねて1万局』(光文社新書)、『日本のシルクロード――富岡製糸場と絹産業遺産群』(中公新書ラクレ)など。2019年7月に『観光公害』(祥伝社新書)を上梓。

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