北朝鮮では間違っても「鉄道」に投資をするな 開放された場合、有望な投資先は?
北朝鮮に眠っている鉱物資源の埋蔵量を正確に知ることはできない。北朝鮮政府が公表している数値以外にまともなデータが存在しないからだ。しかも、北朝鮮政府は鉱業セクターの投資価値を大きく見せたいと考えているはずで、数字は割り引いて考える必要がある。
とはいえ、政府統計が少しでも現実を反映しているとすれば、北朝鮮は石炭(同国の主要輸出品の1つだ)だけでなく、鉛、銀、金、マグネサイト、鉄鉱石などでも、かなりの埋蔵量を抱えていることになる。韓国側の推計によれば、2016年時点で、北朝鮮の名目GDP(国内総生産)の約12%は鉱業によるものだった。このような鉱物資源が東アジアに存在するという地の利もあって、北朝鮮は韓国や中国企業の関心を引き付けている。
金融は「ブルーオーシャン」
銀行を国の支配下に置くという政府の方針は今も変わっておらず、北朝鮮には金融市場というものが公式には存在しない。とはいえ、国有企業は市場原理に基づいた活動に関与したり、個人から資金調達を行ったりすることが許されるようになってきている。
北朝鮮ではこれまでも、部分的に外国資本の経営となっている銀行がいくつか存在した。韓国統一省がまとめたリストによると、1980年代から現在にかけて、延べ6行がこの種の所有・経営形態をとってきた。一時期には、12行以上が銀行間の国際送金で一般的に使われているSWIFT(スイフト)のシステムに加わっていたこともある。だが、このような銀行が北朝鮮経済にとって戦略的に重要な意味合いを持ったことはない。
北朝鮮には現代的な金融サービスが事実上、存在しないということだ。国際金融市場から孤立した北朝鮮では、至る所で資本不足が起き、消費者が融資を受ける仕組みもない。北朝鮮経済は、金融産業の不在という大きな構造問題に直面しているのである。
言うならば、金融は北朝鮮にとって無限の可能性を秘めた「ブルーオーシャン」だ。安価な労働力と豊富な鉱物資源を抱える一方、深刻な資本不足にさらされた北朝鮮には潜在的に大きな資金需要がある。北朝鮮に対する経済制裁が解除され、経済の自由化が進めば、安全性の高い貯蓄商品、保険、消費者金融などには大きな市場が開けてこよう。
もちろん、政情や外交面で大規模な変化が起きなければ、北朝鮮は安全な投資先とはならない。ただ、本稿で見てきたように潜在的なビジネスチャンスは大きく、海外投資家が関心を持つ日がやってくる可能性はある。北朝鮮の経済発展が軌道に乗れば、銀行、保険、その他の金融仲介サービスに対するニーズは急上昇するはずだ。
(文:ピーター・ウォード)
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