小泉・小沢「恩讐を超えた共闘」のインパクト 「安倍首相批判」と「脱原発」で急接近

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小泉、小沢両氏はともに1942年生まれの76歳。衆院選初出馬も同じ69年だが、小泉氏は落選して次の1972年暮れの衆院選で政界入りしたため、小沢氏が1期先輩だ。小泉氏初当選の約半年前の72年7月には、小沢氏が師事した田中角栄氏が自民党総裁選を勝ち抜いて政権を奪取し、当時のマスコミは「今太閤」とはやし立てた。

この総裁選で田中氏に惜敗した福田赳夫氏の「書生」として修業した経験を持つ小泉氏だけに、初当選以降は党内の「反田中」勢力の先兵として活動し、1976年の福田政権誕生時も側近として福田氏に寄り添っていた。佐藤栄作政権時代からライバルだった田中、福田両氏は、その後も党実力者として対立を続けたため、それぞれの側近だった小沢、小泉両氏も政治的に反目し合う立場となった。

ただ、福田氏や小泉氏が反発した「数とカネでの党支配」という"田中型政治"の申し子とされた小沢氏が、1989年発足の海部俊樹政権で党幹事長に就任すると、党全国組織委員長だった小泉氏と組んで全国行脚するなど、親交を結んだ時期もある。その後、小沢氏が1993年に「政治改革」を旗印に手兵とともに自民党を離党して新生党を結成し、その直後の衆院選で自民党を過半数割れに追い込んで、非自民連立の細川護熙政権を誕生させてからは、与野党に分かれて戦う関係となった。

小泉氏は「利益配分型の田中・竹下派」への反発から故加藤紘一元幹事長や山崎拓元副総裁とYKKトリオを組んで政局のキーマンとなり、2001年春には「自民党をぶっ壊す」と叫んで総裁選に出馬し、圧勝して小泉政権を樹立。田中派の流れをくむ経世会(竹下派)つぶしを狙った2005年夏の「郵政解散」断行で大勝していわゆる「経世会支配」を終わらせ、2009年の衆院選を機に政界を引退した。

一方、自民党を飛び出した後の小沢氏は、「政権の受け皿」となるべき大野党結成に心血を注ぎ、2009年衆院選では当時の民主党の幹事長として剛腕を発揮し、自民党を惨敗に追い込んで再び政権交代を成し遂げた。ただ、2012年夏には野田佳彦政権が実現を目指した消費税増税に反対して、今度は民主党を分裂させ、同年暮れの民主党政権崩壊後も、小野党の党首に甘んじながら、野党再結集による政権交代になお執念を燃やし続けている。

「脱原発」とともに手厳しい安倍批判

こうして、それぞれ同時代に「波乱万丈の政治家人生」を生き抜いてきた小泉、小沢両氏が、今回のように表舞台で手を組むのは約30年ぶりとなる。両氏の政治理念や政治手法は依然として隔たりが大きいが、「脱原発」という共通目標が両氏の接着剤となった格好だ。

もともと原発推進派だった両氏だが、2011年3月の東日本大震災による福島第1原発事故以来、そろって「脱原発」へ方向転換した。

政界引退後、「選挙には関わらない」としていた小泉氏だが、2014年の東京都知事選では原発反対を旗印に細川元首相を擁立して選挙戦に身を投じ、今年6月10日の新潟県知事選でも原発再稼働反対を唱える野党統一候補の応援に駆け付け、同候補を推す小沢氏との連携を深めた。

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