中国で大いに流行する「アニメ・漫画」の行方 待望される「国産ヒーロー」
テンセントがロイターに語ったところでは、このマンガを元にしたアニメシリーズは30億回超も視聴されており、6000万人以上の課金加入者を抱える同社の動画配信サイトのなかでも最大のヒット作の1つになっているという。
このアニメの主要キャラクターである塗山蘇蘇(トサン・スース)は、ファストフードチェーンのケンタッキー・フライド・チキン(KFC)<YUM.N>のCMにも登場している。テンセントは現在、この作品のテレビシリーズや、登場人物を使ったビデオゲームの制作を検討している。
求められる国産ヒーロー
中国のエンターテインメント産業では、巨大テクノロジー企業がきわめて大きな役割を果たしている。映画からスポーツに至るまで、配信サイトの大半を支配しているのはテンセントとバイドゥと電子商取引最大手のアリババであり、この3社はソーシャルメディアやオンラインゲームでも優位を占めている。
こうした企業は、アニメ(中国語で「動漫」)を好む若い世代に支えられたサブカルチャー台頭の波に乗ることを目指している。業界幹部によれば、こうした層が強く求めているのは、国産のヒーローが増えることだという。
またこの世代は、親の世代が若者だったころよりも裕福になっており、使えるカネも多い。
バイドゥのオンライン番組配信の「愛奇芸(iQiyi)」<IQ.O>事業担当の上級副社長を務めるGeng Danhao氏は、北京で開催されたイベントで、「特に2000年以降に生まれた若者は、消費にとても意欲的だ」と語った。
四川省の大学生、21歳のZhang Tuoさんは、プラスチック製フィギュアからTシャツに至るまで、マンガ関連の商品に7000元以上も費やしたという。彼のお気に入りは、「SPIRITPACT─黄泉の契り─」「Monster List」といった国産の作品だ。
南西部の都市・成都の学生、20歳のタオ・ジエさんは、中国のマンガはストーリー展開やアニメーション技術の点で改善されてきたと話す。国内の物語を使うことも魅力だと彼は言う。
「中国のマンガ、アニメの多くは、すでに読んだことのあるオンライン小説が元になっている。原作のファンだから、マンガやアニメも気に入っている」とタオさんは言う。
こうした変化は、テレビのゴールデンタイム枠を国産アニメ用に確保しようとする政府の支援策によっても後押しを受けている。