親の成年後見人になった私が後悔している事 父の預金を解約するため制度を利用したが…
母の死後、介護施設に入居した父と、飲食店で食事をしたとき「俺がおごるよ」と言ったことがありました。当時、父の認知症の症状は持ち直ししており、普通の会話が成り立つことも多くありました。だからこそ父の意思を尊重して、「じゃあ、おごってもらうよ!」と、その飲食代を父の預金から支払わせてもらいました。成年後見人になると、家庭裁判所に1年に1度、財産の収支報告をする必要があるのですが、この出費には「本人の意思とは立証できない」ということで、認めてもらえませんでした。
同様の理由で、母が元気なときに、親子間で話し合っていた、相続税対策も一切できなくなりました。年間110万円まで贈与税が発生しない「暦年贈与」を実行しようとしたら、裁判所からストップがかかったのです。母の遺産相続についても、父は私に「俺はいらないよ」と言っていましたが、法定相続分に従わざるを得ませんでした。
家庭裁判所としては「認知症を患い、本人の判断能力が低下しているから」という言い分で、こうした行為を認めないわけですが、それでは「自己決定権の尊重」や「残存能力の活用」といった理念は、もはやどこ吹く風です。
成年後見人になるかは慎重に決めるべき
今、私が強く思っているのは、成年後見人になるかどうかは、もっと慎重に決めるべきだったということです。例えば、母の遺産相続については、当時の父は、母の死去による精神的な苦痛で、認知症が悪化しており、とても自分で署名ができる状態ではありませんでした。結局、それが成年後見制度の利用につながるのですが、その後、父の容体は、少しずつ持ち直していきました。なぜ私は、父の状態がよくなるのを辛抱強く待たなかったのか。そうすれば、自分で署名ができたかもしれないのです。
親のメインバンクの引き出しについても、銀行に直談判することで、当面の資金は得ることができたのです。だったらその後も何度も何度も足を運んで、直談判を繰り返すべきだったのです。介護施設の入所契約に至っては、契約の際、施設の人から「ご家族であれば成年後見人は必要ありません」と言われました。
認知症を患う高齢者が増えている今、私のような状況に陥るケースは、決して珍しくはないと思います。それだけに強く訴えたいのは、成年後見人制度は、あらゆる手段を講じた結果、それでも「利用する必要がある」と、最終的に判断したときに限って、利用を検討すべきだということです。私のように早まってこの制度を使えば、大きく後悔することになります。さらにいえば、親が元気なうちから、親の銀行口座の暗証番号を把握するなど、事前の対策を行うことも大切です。
ここではっきり伝えたいのは、成年後見制度を一度使えば、後見を受ける人が亡くなるまで、やめることはできないということです。そのことをぜひ肝に銘じてください。
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