日本の「観光政策」が犯している初歩的なミス 情報はあればいいというものではない
観光におけるマーケティングでもう1つ抜けている要素は、開発の段階での「外国人の目」である。現在日本が抱えているのは、開発段階における多様性の完全な欠如で、外国人観光客が日本を訪れる理由や、彼らが日本で体験したいことに対する理解の欠如につながっている。
少なくとも筆者が外部から見る限りでは、多様性の欠如を解決する一つの方法は、日本に関心を持つ外国人の意見をより多く聞くことである。この点で、前述のダイワロイヤルホテルシティなどは複数のバイリンガルスタッフを配置するなど、正しい方法をとっている。政府はこうした企業の先例にならうべきだろう。ポイントは、それぞれの国や潜在的旅行者に通用する方法でストーリーを伝えることである。
組織構造という日本的なハードル
中には外国人の意見や知識を活用する自治体も出てきている。実際、筆者自身も地方の観光政策に関するブログを書いていることもあって、中部広域観光ポータルサイト「Go! Central Japan」や、多くの日本版DMO(Destination Marketing Organization=目的地をマーケティングする組織)に対して、デジタルマーケティングに関するセミナーをよく行っている。
ただ、日本の組織で難しいのは、正しい方策をやろうとしても、それを実行するハードルが高いことだ。これは組織の構造やヒエラルキーの問題で、実行しようにもトップが首を縦に振らない、ということが少なからずあるのである。
こうした中、多くの旅行者を地方に誘導するという厄介な仕事は、最終的に民間企業の役割になるだろう。実際、地方へのカスタムツアーを手掛ける奥ジャパンや、新たに創業したハートランド・ジャパンのような企業はこれからも増えることが期待される。特に裕福なリピーターたちには、こうした企業が企画するディープな文化に触れるガイド付きの旅行はうってつけだ。
地方自治体がこうした小規模で融通の利く企業と手を組めば、面白いことが起こるかもしれない。外国人富裕層を呼び込むことは、ゆっくり、しかし、確実に沈む運命にある地方自治体にとっては前途有望な選択肢だと言える。
最後に、日本が2020年に4000万人という数字上の目標と、裕福な外国人観光客をもっと増やすという両方の目標を達成したいのであれば、日本のストーリーをよりよく伝えることに重点を置くべきだろう。そのためには、本物のストーリーと伝え方、届け方が重要になる。日本の観光ブームを一過性のものにしないためには、サステナブルな観光政策が不可欠なのである。
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