日本の「観光政策」が犯している初歩的なミス

情報はあればいいというものではない

一方、「ゴールデンルート」と呼ばれる東京や箱根、京都、大阪などは非常に混雑しており、インフラがたえられない状態になっている。たとえば京都では、外国人観光客急増に伴って市バスの車内混雑が深刻化した結果、従来の後ろのドアから乗る方式を見直した。

ホテル業界も増え続ける旅行者への対応にもがいている。6月15日には民泊新法が施行されたが、外国人観光客のニーズにどこまで応えられるか不明だ。こうした中、新たな取り組みを行うホテルも出てきている。

9カ国語に対応するスタッフを配置

たとえば、大和ハウス工業の子会社、ダイワロイヤルホテルシティは最近、国内で新たに4つのホテルを開業したが、その1つ、6月9日にオープンしたダイワロイヤルホテルグランデ京都は9カ国語に対応するバイリンガルスタッフを配置している。デザインも訪日外国人客を意識して、伝統的な日本のモチーフをふんだんに取り入れているほか、宿泊客が無料で使えるホテル設置型スマホ「ハンディ」も各部屋に備えている。

京都にオープンしたダイワロイヤルホテルグランデ京都は、日本的なデザインが特徴(写真:ダイワロイヤルホテルシティ)

基本宿泊料金(朝食抜き)は、たとえば最も安いスーペリアダブルで1人約2万4000円、最も高いジュニアスイートの場合は同約7万6000円(ただし、早割や宿泊時期によって価格は変動する)と高額だ。しかし、ダイワロイヤルホテルシティはこうした高価格帯のホテルの需要が高いと見ている。

実際、開業に先駆けて、海外のブロガーなどを招待して行われたイベントでは、多くの参加者が、立地が便利なことに加え、多言語対応サービスに感銘を受けていた。マレーシア人のブロガー、アリサ・チョウさんは「とても戦略的だと思った。ホテルのコンセプトは日本のホスピタリティと文化をモダンなスタイルで表現したもので、間違いなく世界中のゲストがここで寛ぐことができるだろう」とリポートしている。

外国人が過ごしやすいホテルが増えるのは訪日客にとっては朗報だ。しかし、政府が2020年までに本気で4000万人以上の旅行者を呼び込むつもりなら、日本は依然として大幅な宿不足に直面することは避けられない。

こうした中、今後より重要なのは増え続ける外国人観光客をメジャーな観光都市以外に誘導することである。目下、大都市が旅行者急増で溺れそうになっている一方、田舎は乾いて死にそうな状態にある。本当の意味で観光ブームをサステナブルなものにするには、このアンバランスを是正する対策が不可欠だ。

もちろん、外国人を地方に誘導するのは容易ではない。たとえば、多くの地域では日本語を話せない人をもてなすための適切なインフラが圧倒的に不足している。もっとも、東京ですら外国語対応が不十分であることを考えると、これが、旅行者が東北や山陰地方を訪れない唯一の原因ではないということがわかる。

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