ドイツ「高速ネット普及率2%」というお粗末

日本は76%も普及しているのに

「台帳に書ききれないほど注文があるのは喜ばしいことだが、自動的に今後もそれが続くわけではない」とベア氏。「ドイツの中小企業の特徴は長年、4半期ベースではなく世代で考えてきたことだ。デジタル化なくして、将来が保証される企業など1つもない」

ドイツの建設業界も好景気に沸いており、今年の売上高の伸びは6%と予想されている。気に入った契約だけつまみ食いすることが可能な建設会社にとって、ブロードバンド契約はリストのトップには上らない。ここでも、ドイツにおける「成功」が、デジタル化の進捗(しんちょく)に対してブレーキの役割を果たしている。

猜疑心

高速インターネット整備は問題の1つだが、人々の考え方を変えることは全く別の問題だ。

ナチスドイツ、そして共産主義国家だった旧東ドイツの秘密警察「シュタージ」による厳しい監視のせいで、ドイツ人はプライバシーと個人データの保護に神経を注いでいる。

メルケル首相は、いまこそ前に進む時だと呼びかけている。その理由として、人工知能(AI)の発展はデータ共有が土台だと主張する。

「可能な限りデータを制限しながら、AIの最前線にいることができると考えるのは、餌を与えずに牛を育てたいと考えることと同じだ」とメルケル首相は5月に語った。

ベア・デジタル化担当相は、デジタル技術について「常に漠然とした不安が広く漂っている」と不満を漏らした。

リリウム社のウェブサイトに掲載されているギルヒング上空でテスト飛行する垂直離着陸ジェット機。4月撮影。同社提供写真(2018年 ロイター)

電動垂直離着陸が可能な「空飛ぶタクシー」を開発するリリウムの共同創業者ダニエル・ウィガン氏は、起業当初に、こうした懐疑的な考え方を目の当たりにしたと話す。同社のライバル企業には米カリフォルニア州に拠点を置くカレム・エアクラフト、ブラジルのエンブラエル、スロベニアのピピストレルがある。

航空宇宙工学を専攻したウィガン氏は、2014年に友人2人と起業した当初、飛行制御ソフトの専門知識をもつ4人目のパートナーを求めて、母校ミュンヘン工科大学の博士課程の学生たちと面接した。

「1、2分後には、半数が『この人は頭がおかしい』と言って部屋を出て行った」とウィガン氏は語る。

このように敬遠される傾向は根強い。ドイツ連邦統計局のデータによると、2017年に設立された小規模事業の数は2%減少。前年には10%減少していた。

ウィガン氏は辛抱した。その結果、彼のスタートアップ企業は賞を受賞し、数千万ドルのベンチャー投資資金を得た。高度にデジタル化された垂直離着陸ジェット機を開発し、2025年までに空飛ぶタクシーの受注を開始する計画だ。

ドイツは起業家をもっと優遇すべきだと、ウィガン氏はOECDの専門家の意見に賛同する。

「こうした考えをもたらすのは、ドイツの人であり文化だ。カリフォルニアでは、ほぼ2世代で全く異なる文化と経験を築き上げてきた。それが違いとなって表れている」

ドイツ再統一以降で最長となる経済成長が衰退の兆しをみせる中で、このデジタル化に成功すれば、新たな経済発展を喚起する可能性がある。

12日に発表されたOECDのリポートによれば、ブロードバンド投資によってドイツの平均インターネット接続速度が2025年までに上位10カ国の平均に追いつくなら、10年後には1人当たりの国内総生産(GDP)は3%増加すると推定している。

(Paul Carrel 翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)

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