ドイツ「高速ネット普及率2%」というお粗末 日本は76%も普及しているのに
何十年も産業イノベーションの先頭を走ってきた欧州最強の経済大国ドイツだが、デジタル時代への適応が進まず悪戦苦闘している。同国の政策当局も、そのことを危惧している。
ツェムラー氏の経験は、変革を阻む2つの主な障害の存在を示している。そもそも、デジタル技術を彼の会社が受け入れるには、政府の後押しが必要だった。それを受け入れてからは、同社の計画はお粗末なブロードバンド網に悩まされている。
高速インターネット接続に関する経済協力開発機構(OECD)の2017年調査によれば、先進国34カ国のうち、ドイツは29位に低迷しており、日本と韓国が上位を占めている。
「われわれの未来の繁栄はそれにかかっている」
メルケル首相は、ドイツが抱えるデジタル基盤の不備に対処することを、最後とみられる首相4期目の優先課題と位置づけ、「われわれの未来の繁栄はそれにかかっている」と警鐘を鳴らした。
ドイツ政府が直面する課題の大きさを指摘する企業経営者や政策当局者は、ドイツ企業がなぜ、データの共有保存やワークフロー管理に向けたデジタル技術の採用に出遅れているのか、その背景を語った。
高速インターネットの不備は、障害の1つだと彼らは指摘。
また、政府の非効率性や、働き方の新たな方法を受け入れることに消極的な、ドイツの「ミッテルシュタント」と呼ばれる中小企業も障害となっている。さらに、ナチスドイツや共産党支配による長年の監視のせいで、多くのドイツ人はデータ共有に懐疑的だという。
また、強いドイツ経済が、現代化に向けた取り組みを阻むという「パラドックス」も存在する。受注対応に忙しすぎる企業は、将来のデジタル化を計画する暇がないというのだ。
政府のデータも問題の深刻さを物語っている。
ブロードバンド網を拡大するために設立した政府ファンドは昨年、利用可能資金のわずか3%しか使われなかったと、シュパーン副財務相(当時)は同僚議員に宛てた1月23日付の書簡で示している。