オンライン英会話スクールが、フィリピン人講師を積極的に採用するようになった背景には、人件費が大幅に抑制できるという思惑が確かにあったに違いない。事実、フィリピン人がフィリピンからオンラインで教えるからこそ、格安のレッスンが実現するのである。
しかもフィリピンと日本の時差はわずか1時間。日本が午前1時なら、フィリピンは午前0時だ。これなら早朝や深夜のレッスンも、シフト制で提供できるから願ってもない。とはいえ、フィリピン人講師が人気である一番の理由は、何よりも彼らが話す英語の質の高さにある。なかでもセブの知識層が話す英語は、ひじょうにきれいで流暢だ。
英語はフィリピンの公用語、発音はネイティブ並み
フィリピンは1898年から1946年まで、およそ半世紀にわたりアメリカの植民地だった。フィリピン全土に小学校をつくり、すべての授業を英語で行うというアメリカの植民地政策が、今に至る英語の普及のきっかけである。
母語の見直しが進んだ現在、公立校ではフィリピン語と英語の両方で授業を行うようになっているが、私立校では依然英語による授業が多い。テレビでは英語の番組が当たり前に流れるなど、英語は日常生活にすっかり溶け込み、今ではフィリピン語と並ぶ公用語だ。
また、大学教育はほとんど英語で行われるため、高等教育を受けた人であれば、ネイティブ・スピーカーに近いレベルで英語を使いこなすことができる。
同じフィリピンでも、地域によってはかなり強い訛りが出る場合もあるようだが、マリン・リゾートとして有名なセブ島では、訛りはあまり気にならない。セブはもともと教育熱心な土地柄で、その中心地であるセブシティは、高等教育機関が集まる大学都市。癖のない洗練された英語を話す人が多いことで知られている。その英語力を見込んで、セブにコールセンターを設置するグローバル企業も少なくない。
豊富な人材と適切な研修が、優れた講師を育てる
オンライン英会話の講師にもセブ出身者が多いが、セブ出身者なら誰でも英会話講師になる資質があるかというと、そうはいかない。大卒で英語が堪能でも、人に英語を教える能力はまた別の話。そこで必要となるのが講師研修だ。
私と同じく「明治大学 文明とマネジメント研究所」の客員研究員である山本昌平氏は、オンライン英会話スクール「QQイングリッシュ」の理事でもあるが、「新人講師については、日本人、フィリピン人、イギリス人混合の研修チームが中心となって、全員に座学とワークショップからなる5週間の研修を行っている」と話してくれた。
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