老舗大手が100店閉鎖!英国を襲う消費激変 ネットだけが敵じゃなかった

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縮小

6月、老舗百貨店「ハウス・オブ・フレイザー」が、経営悪化を理由に31店舗の閉店を発表した。約6000人の雇用に影響が及ぶ。同時期、ディスカウントストア「パウンドワールド」は全355店舗の閉鎖を発表し、これで約5000人の雇用が消えることになる。

このほかにも、百貨店業界ではデベナムズ、スーパーでは最大手テスコ、そしてセインズベリーズやモリソンズ、飲食業では日本でも「裸のシェフ」で著名なジェイミー・オリバーが運営するレストラン「ジェイミーズ・イタリアン」、イタリア料理の「カルッチオ」などが店舗数の大幅縮小を予定している。今年になって電子機器販売のマップリンも姿を消した。

商店街の「顔」が変わってきた

6月7日付の英ガーディアン紙の試算によれば、こうした店舗の閉鎖や業務縮小によって、今年上半期で約3万5000人の雇用が消える見込みだ。

いずれの小売店の店舗も商店街の目抜き通りに居を構え、長年にわたって英国の消費者の需要に応じてきた。しかし、数年前から、商店街の「顔」が変わってきた。かつてのなじみの店舗、その町とともに生きてきた店の数々が退散し、目抜き通りが日本の「シャッター街」のような姿になる地域も出てきた。

商店街の崩壊によって地域コミュニティが瓦解することを危惧した政府は、2012年、小売業コンサルタントのメアリー・ポルタス氏に頼み、「目抜き通りを救え!」という名称を付けた商店街活性化プロジェクトを開始。12の商店街がこれに参加し、1200万ポンドの予算が付けられた。調査会社「ローカル・データ・カンパニー」が昨年行った調査によると、該当地域の店舗の消滅率は5店舗に1つで、これはプロジェクトにかかわらなかった地域と同レベルであったという。

英国小売業の苦難が始まったことを人々が認識したのは、「ウーリーズ」の愛称で親しまれていた小売業「ウールワース」(もともとは米国で発祥)の倒産だった。お菓子、おもちゃ、DVD、新聞雑誌、衣料品、ガーデニング用品など「廉価で何でも買える、庶民の店」としてウールワースは国民に愛されてきた。しかし、大手スーパーが食品以外の品物の取りそろえを増やし、音楽や映画などエンターテインメント関係のグッズがアマゾンなどのネットサイトで買えるようになると、苦境に陥った。

2008年後半の金融危機とこれに続く不景気が打撃となり、11月、破産状態になった。

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