自民総裁選、中立装う竹下派はどう動くのか 「最強軍団」の復活と影響力拡大を狙うが…

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竹下氏は竹下登元首相とは20歳以上離れた異母弟だ。竹下元首相は、「闇将軍」と呼ばれて首相退陣後も権勢をふるった田中角栄氏の率いる「田中軍団」を割って出て、竹下派(経世会)を旗揚げし、その後に政権を奪取した。同元首相はリクルート事件で退陣後も田中氏と同様に党運営への影響力を維持し、小泉純一郎政権発足時までは総裁選びの主役を演じてきた。

ただ、小泉政権以降は、派内で相次いだ内紛や有力な総裁候補を持たない弱点から最大派閥の座から滑り落ち、安倍氏を含めて首相を輩出し続ける清和会の後塵を拝してきた。今回の竹下派の動きは竹下亘氏主導での「軍団復活への蠢き(うごめき)」(自民長老)とされるが、首相の「3選」を前提としながら、あえて総裁選のキャスティングボートを握ることで、同派の存在をアピールするとともに「政治的に高く売る」(自民幹部)ことを狙う戦略との見方もある。

竹下派の最大の強みは、参院での主導権を握っていることだ。参院自民党の実力者で国会運営の司令塔とされる吉田博美幹事長は、経世会支配の中軸だった故・金丸信元副総裁の元秘書で、現役時代に「参院のドン」と呼ばれた青木幹雄元官房長官の側近でもある。

竹下登氏が「参議院を笑う者は参議院に泣く」と指摘した政権運営での参院重視の方針を、今も受け継いでおり、今回の会期大幅延長も吉田氏らの主導で実現した。このため首相の「3選」にも絡む残された重要法案の成否も、吉田氏らの采配次第で、首相らは「ひたすらお願いするしかない」(官邸筋)のが実態とされる。

政界引退後も竹下派への影響力を維持する青木氏は、かねてから首相の政権運営には批判的とみられている。平成研は4月に会長が額賀福志郎元財務相から竹下総務会長に交代したばかりで、永田町では「竹下派復活のクーデター」と話題になったが、額賀氏に会長交代を迫って引導を渡したのは吉田氏をリーダーとする参院竹下派の面々だ。

クーデターによる竹下派復活で「安倍離れ」

第2次安倍政権で竹下派から党・内閣の要職への起用が続く茂木敏充経済再生担当相と加藤勝信厚生労働相は、かねてから首相と親しく、派内では「お友達人事」との不満が強い。さらに、額賀氏も総裁選で首相支持の姿勢をにじませていたため、党内では竹下氏への会長交代を「平成研の安倍離れ」と受け止める向きが多かった。

これを裏付けたのが党3役として安倍政権を支える立場の竹下氏の派閥領袖就任後の言動だ。「もり・かけ」疑惑の再炎上で内閣支持率が急落していた5月下旬には、岡山市内での講演で秋の総裁選について「間違いなく安倍さんが引き続き首相になるかというと、すぐにその通りですとは返事をしかねる」と述べ、物議をかもした。

また、6月2日に松江市で開かれた党島根県連大会での講演では、森友・加計学園問題について「役所の不祥事も最終的には首相の責任であり、それぞれの担当の政治家が真正面から受け止めるのが政治のあるべき姿だ」と、首相らの対応への批判ともとれる発言をして、大きく報道された。ただ、竹下氏は首相を含めて総裁選出馬が想定される候補者については、巧みに等距離を保っている。

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