自民総裁選、中立装う竹下派はどう動くのか 「最強軍団」の復活と影響力拡大を狙うが…

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竹下氏は、自らが県連会長を務める島根県連大会後のパーティーに来賓として岸田氏を招待しエールを交換した。同氏が会長を務めていた昨年の党広島県連の会合に竹下氏が出席したことへの「お返し」だったとされるが、竹下氏は派閥会長就任時のインタビューで、岸田派について「政策的に一番近いグループかなと感じている」と述べていたこともあり、永田町では「すわ、竹下・岸田連合か」との情報が駆け巡った

その一方で竹下氏は、5月30日に開催された石破派パーティーでは「石破さんも闘志の男だ。ときどき政治に対し苦いことを言うが、耳触りのよいことばかり言う人は信用しないでください」と評価してみせた。平成研から飛び出して派閥を立ち上げた石破氏に対して竹下派内には「あいつだけは許せない」(幹部)との抵抗感が強いが、竹下氏は「私に『石破氏だけは絶対ダメだ』と言ってきた人はいない」と石破氏支持にも含みを持たせた。

よみがえる「大角連合」と保守本流の反発心

竹下氏は安倍首相との個人的信頼関係もことあるごとに強調する。中曽根康弘内閣時代には、安倍首相が父・安倍晋太郎外相の秘書官、竹下氏が兄・竹下登蔵相の秘書官を務めたが、当時、"安竹連合"とも呼ばれて極めて親密だった父と兄にそれぞれ寄り添ったことで「心の許せる遊び仲間になった」(竹下氏)とされる。

ただ、竹下氏は講演などで安倍外交を高く評価する一方で「首相を評価するなら(総裁選で)支持するかというと、そこが私の悩みだ」と意味深な発言も付け加える。まさに「変幻自在の発言」だが、党内からは「各候補と等距離を保つことで、自らの存在感を高める狙いが見え見え」(自民長老)との批判も少なくない。

もともと竹下派は政治理念や政策から見れば自民党の保守本流グループで、岸田派との共通点が多い。総裁選の歴史をみても1972年の「角福戦争」や1978年の「大福対決」では田中角栄氏と故・大平正芳氏(元首相)による"大角連合"が勝利の源泉となった。竹下、岸田両派の長老議員は「戦後政治の中核となってきたのは故・吉田茂元首相の流れをくむ保守本流だ。我々はその後継者として今後の日本政治の中軸となる立場だ」(閣僚経験者)と胸を張る。

首相の出身派閥の細田派は首相の祖父の岸信介元首相の流れをくむいわゆる"保守傍流"だけに、「いつまでも傍流のいいようにはさせない」という反発心だ。このため首相サイドでも「岸田氏が出馬すれば、竹下氏が支持に回る」とみる向きが多い。

そうした状況も踏まえ、首相は5日夜、都内のフランス料理店で竹下氏ら竹下派幹部と会食した。竹下氏の派閥会長就任祝いを名目に首相が呼び掛けたもので、首相と竹下氏は秘書時代の思い出話に花を咲かせた。竹下派からは、額賀前会長や吉田氏に加え、首相に近い茂木氏も同席、「総裁選の話は出なかったが首相の気配りが目立った」(出席者)とされる。

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