自民総裁選、中立装う竹下派はどう動くのか 「最強軍団」の復活と影響力拡大を狙うが…

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首相は国会の大幅会期延長を決める前の18日夜には都内の日本料理店で岸田氏と密談した。岸田氏は記者団に「自民党総裁選などいろいろ話をした」と語ったが、具体的内容には踏み込まなかった。岸田派は20日夜、都内で岸田氏と幹部らが会食し総裁選での各派の動きなどで情報交換したが、岸田氏は首相との会談内容について「(総裁選について)まだ(私の)結論は出ていないと(首相の質問に)答えた」と説明したとされる。

麻生氏とともに首相を支える二階俊博幹事長は26日の都内の講演で、首相の総裁3選について「もう間違いない」と明言した。二階氏は報道各社の世論調査で内閣支持率が回復していることについて「いかに日本の国民の良識が立派かを物語っている」と語り、石破氏や岸田氏をけん制してみせた。

これと同時進行で岸田派の幹部・中堅議員は、同夜都内で開いた会合で総裁選への対応を協議したが、これまでの慎重論は影を潜め、岸田氏の出馬を求める主戦論が噴出したとされる。出席者の多くは会合後の取材に「総理総裁候補として岸田会長がいるわけだから、やってほしいということに尽きる」と口をそろえた。

竹下元首相のように粘り腰で派内をまとめるのか

竹下氏にとって政治の師匠は兄の竹下元首相だ。「人知れぬ苦労と気配りを重ねて首相の座にたどり着いた」(竹下派長老)とされる元首相は、政界に数々の「竹下語」を残している。有名な「10年たったら竹下さん」「歌手1年、総理2年の使い捨て」などと並んで竹下政治の神髄とみられているのが「汗は自分でかきましょう。手柄は人にあげましょう」だ。

総裁選をめぐり首相をはじめ党内各派幹部が竹下氏の言動に注目し、反応する現状はまさに竹下氏の思惑通りの展開にも見える。「総裁を目指さず縁の下の力持ちに徹する」という竹下氏の姿勢は兄の政治姿勢を受け継いでいるのは間違いない。

ただ、派内の結束にはなお不安が残る。竹下派幹部の山口泰明事務総長は13日夜、都内で開いた政治資金パーティーで、総裁選について「(首相が)3選を自ら勝ち取って、盤石な体制で日朝交渉に臨んでもらいたい」と首相の3選支持を明言した。茂木氏など親安倍グループの中には「首相以外を推すなら、派から出ていく」と息巻く議員もいるという。

これに対し、竹下氏は「わが派は総裁選に一致結束して臨む」と繰り返す。竹下氏が「辛抱、辛抱、また辛抱」との口癖で"おしん宰相"とよばれた兄のように、粘り腰で派内をまとめることができるかどうかが今後の「竹下流総裁選戦略」のカギとなるのは間違いなさそうだ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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